第一部
4
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「行っちまったぜ、あいつ」
握り拳の親指のみを突き立て、背後を指す。
その言葉でやっと我を取り戻したのか。
短い悲鳴と共にカロルは顔を上げるが、最早ライアンの姿は見えない。既に一人で街を出てしまったのだろう。
顔に似合わず大胆な男だな、とユーリは思った。
「どうする。受けるのか?」
この状況を前にして彼がどんな決断を下すかは想定出来たものの、念を込めて問い掛ける。
カロルは後方に向け流すように固めた茶色の前髪を掻き毟り、深々とため息を吐き出した。
その深さに魂まで一緒に抜け出すのではないかと不要な心配が頭を過ぎった矢先、絶叫が夕暮れ空を裂く。
「もおッ、手紙受け取ったら行くしかないじゃん!」
その怒声に驚き、思わず一瞬肩が揺らぐ。
渋々…といった風ではあるが依頼は無事承認されたらしい。
これが甘さとは別物の、我らが首領の人情味である。
子供のわがままにも似たその申し出に時々振り回されながらも満更ではない。
今回も指令が下った以上はそれに従うべく、ユーリは剣を抜いた。
「行くよ、ユーリ!」
「おう」
随分前に視界から消えた背中を追うため、二人は走り出した。
機械仕掛けの城に向かって。
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