最終話 皇帝への道
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欠片も無い視線だ。
「真だ。ローエングラム伯、卿を総司令官として遠征軍を起こす。兵力は二万」
「二万?」
「不満かな、ローエングラム伯」
リヒテンラーデ侯の声が尖った。視線も鋭い。
「とんでもありません。二万もの兵を預けて頂けるのかと驚いた次第です」
「陣容については帝国軍三長官が検討中だ」
「有難うございます、必ずや陛下の御期待に添います」
俺が礼を言うと皇帝が“期待しているぞ、下がるがよい”と言った。
謁見を終え新無憂宮の廊下を歩いていると爺さんの姿が見えた。ニヤニヤ笑っている。
「よう、ローエングラム伯第一日目の感想は如何だ?」
「喜びが半分と失望が全部、かな」
「何だ、そりゃ」
爺さんが不思議そうな顔をしたから来年早々出兵の事を説明した。爺さんはフンフンと頷いていたが聞き終ると溜息を吐いた。
「二万か」
「二万だ」
「そりゃまたえらく中途半端な兵力だな」
「俺もそう思う」
「フン、嫌がらせだな、お前を勝たせたくねえ、そういう事だ」
俺は黙って頷いた。
通常帝国でも反乱軍でも一個艦隊と言えば一万二千隻から一万五千隻程度の兵力を持つ。二万隻と言えば一個艦隊の兵力としては破格だろう。だが遠征軍の兵力がその二万隻だけとなれば話は違ってくる。反乱軍は当然だがこちらよりも多い兵力で迎え撃とうとするはずだ。となれば艦隊は最低でも二個艦隊、おそらくは三個艦隊は動かすだろう。こちらは兵力も艦隊数も少ない状況で戦う事になる。
「変更の余地は無しか」
「無いだろうな、今日陛下の前で伝えられたんだから」
「そうか、……で、誰を連れて行くんだ。俺とロイエンタール、ミッターマイヤーか? 遠慮するな、何時でも行くぞ。伯爵閣下の初陣だからな、腕が鳴るぜ」
爺さんが陽気に腕を撫でる仕草をした。
「……爺さん」
嬉しかった。敗けるかもしれないのに行くと言ってくれる。勝っても昇進する事は無いのに……。
「それなんだが多分誰も連れていけないと思う」
「ああ、なんだそりゃ。まさか、お前……」
「ああ、編成は帝国軍三長官が行う。俺には決定権は無いんだ、希望を言っても無駄だろうな」
「……」
爺さんが大きく息を吐いた。
「厳しいな、奴らよっぽどお前が嫌いらしい。或いはそれだけ危険だと認識したか。ミュッケンベルガー元帥だな、前回の戦いで懲りたらしいぜ」
「そうだな、俺もそう思う」
前回の戦いでミュッケンベルガーの顔を潰した。勝つため、生き残るためには已むを得なかった。しかしミュッケンベルガーにとってはショックだっただろう、これが俺を叩き潰す最後の機会と思っているに違いない。
「勝算は有るのか?」
「各個撃破、しかないだろうな。一個艦隊の兵力は俺の方が多いんだ」
「なるほどな、となると反乱軍
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