最終話 皇帝への道
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「リュッケルト提督は如何です?」
「俺も褒めてもらったよ。でもまあ昇進は無理だろうな、勲章を貰えれば良いところだ」
おいおい、爺さん、大丈夫か、そんな口調で。驚いたが男爵はまるで気にしていなかった。妙な男だ。
「残念ですね、でもまあその内良い事が有りますよ」
そう言うと男爵は俺を見て“そうでしょう?”と笑みを浮かべながら同意を求めてきた。曖昧に頷いたがヒヤリとしたものを感じた。まさか……。
「ところでミッターマイヤー少将は無事ですか?」
「無事です」
「ではコルプト子爵は?」
「残念だが戦死したと聞いている」
リメス男爵が“そうですか”と言って頷いた。笑みは無い、コルプト子爵の死を悼んでいるように見えた。まさかな。
「コルプト子爵には子供が居ません。コルプト子爵の戦死を知ればオーディンでは次のコルプト子爵を誰にするかで大騒ぎでしょうね」
「……と言うと」
俺が問い掛けると爺さんが“ミューゼル”と俺の名前を呼んだ。
「あそこはブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家と縁戚関係に有るんだ。両家とも自分の息のかかった人間を次の子爵にしようとするだろうな。両家とも面子がかかっている、お互い簡単には退かねえだろう。次期コルプト子爵が決まるには時間がかかる筈だ。男爵はそう言っているのさ」
リメス男爵に視線を向けると“ま、見物ですね”と言ってクスッと笑った。
「コルプト子爵は上手く嵌められたのかもしれません」
妙な事を言う、どういう意味だ?
「コルプト子爵はブラウンシュバイク、リッテンハイム両家の間で上手く立ち回っていました。両家はその事をかなり不満に思っていたようです、利用されているとね。特にブラウンシュバイク公はコルプト大尉の所為で面倒に巻き込まれている。かなりの憤懣が有った」
「まさかとは思うが……」
俺が爺さんに視線を向けると爺さんは肩を竦めて“有り得るだろうな”と答えた。
「コルプト子爵がミッターマイヤー少将を殺しても良し、逆に少将に殺されても良し。フレーゲル男爵辺りが焚き付けたかもしれません。だとするとコルプト子爵も哀れですね」
なるほど、リメス男爵がコルプト子爵の死を悼んでいるように見えたのはこれの所為か……。確かに哀れだ、悼む気にはならないが哀れだとは思える。
「気を付けてくださいよ、ミューゼル提督。あの連中は他人を利用する事、蹴落とす事を直ぐに考える、そして上手です。ローエングラム伯爵家を継げばこれまで以上に提督には利用価値が出る。提督を利用しよう、蹴落とそうとする人間は増える筈です」
「……」
リメス男爵は如何なのだろう。何故俺に好意を示すのか……。
「それとコルプト子爵家の継承問題がこじれればミッターマイヤー少将の命が再び狙われるかもしれません。気を付けるように忠告し
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