暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
盗られたベッドと花畑
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「………おお!」

違う部屋で寝入ってしまったヒトを、どーするか。

簡単なことだ。

運べばいいのだ。彼女の部屋まで。

レンは早速、ベッドを占領しているシリカを、お姫様抱っこで持ち上げる。本人には言えそうにないが、その小柄な体は結構重く、ただでさえ敏捷力極振りのレンには、少々、いやかなり重かった。

「………っ!………………ぅう」

なんでこんなことしてるんだろ、と頭の片隅で思いながら、よたよたと運ぶ。ドアを開け、真っ正面のドアの前に立った時、レンの顔は青ざめた。

──ここからどうしよう。

プレイヤーが借りた宿屋のドアは、システム的に絶対不可侵で、フレンドでもない限り、鍵開けスキルなどのどのような手段を用いたとしても、侵入することはできない。

フレンドでないプレイヤーが、部屋に入ることができるのは唯一つ。

ノックをして、中のプレイヤーが開けてくれるのを待つことだけだ。

だが、本来ノックをして答えてくれるはずのプレイヤーは、今くーくーと腕の中で寝息をたててしまっている。

今度ばかりは、レンの思考は何の返答も寄越さなかった。










耳元で奏でられるチャイムの音に、シリカはゆっくりと瞼を開けた。

自分だけに聞こえる起床アラームだ。時刻設定は午前七時。

毛布の上掛けを剥いで体を起こす。いつも朝は苦手なのだが、今日はいつになく心地よい目覚めだった。深く、たっぷりとした睡眠のおかげで、頭の中がきれいに洗われたような爽快感がある。

大きく一つ伸びをして、ベッドから降りようとしたところで、シリカはぎょっと凍りついた。

窓から差し込む朝の光の中で、床に座り込み、ベッドに上体をもたれかけさせて、こっくりこっくりと船をこいでいる人物がいた。

侵入者かと思い、悲鳴を上げようと息を吸い込んでから、ようやく昨夜自分がどこで寝てしまったかを思い出す。

──あたし、レンくんの部屋で、そのまま………。

恥ずかしいやら申し訳ないやらで、シリカは両手で顔を覆って身悶える。

数十秒を費やしてどうにか思考を落ち着けると、シリカはそっとベッドから出て床に降り立った。

紅いコートの少年の寝顔は、思った通りあどけないもので、シリカは思わず微笑した。起きている時は剣呑な雰囲気を放出することもあるせいでかなり大人びて見えることもあったが、こうして見るとやっぱり年下に見える。

寝顔を眺めているのは愉快だったが、いつまでもそうしているわけにもいかず、シリカはそっと少年の肩をつつきながら呼びかけた。

「レンくん、朝だよー」

その途端、レンはぱちりと目を開けると、瞬きを繰り返しながらシリカの顔を数秒間見つめた。

すぐに慌てたような表情
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