暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
盗られたベッドと花畑
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は夢中で青い半透明の地図を覗き込んだ。目を凝らせば道を行き交う人の姿まで見えるような気がする。
「この真ん中にどーんってあるのが主街区でー、この辺のずぱってした道を通るんだけどねー──」
レンは小さな体を目一杯使って、ついでに非常に擬音語の入った言葉で四十七層の地理を説明していった。
その幼い声を聞いているだけで、なぜだか微笑ましい気分になってくる。
「このこのすらーっとした橋を渡るとねー…………」
不意にレンの声が途切れた。
「……………?」
顔を上げると、レンはそれまでののんびりとした表情を消し、舌なめずりをしそうなほどの冷たい笑みを浮かべていた。
怪訝な表情をしているシリカに気付き、無言で唇に指を当てる。
そのまま、すすっとドアに音もなく近づき──
──コンコン──
ノックをする。
すると、ドアの向こうから驚いたよう気配がし、続いてどたどたと駆け去る足音が聞こえた。
慌てて走り寄り、ドアを開けて首を出すと、ちょうど廊下の突き当たりの階段を駆け降りていく人影が見えた。
「な、何……!?」
「お客さんじゃあ、なかったみたいだねー」
「え……で、でも、ドア越しじゃあ声はきこえないんじゃ………」
その通り、この世界のあらゆるドアは、条件付きながら完璧な遮音性能を持っている。
シリカが知っている限り、閉じられたドアを透過する音は、
叫び声
(
シャウト
)
、ノック、戦闘の効果音、の三つだけ。
平常な話し声などは、たとえドアに耳を押し当てても聞こえない。
シリカの的を得た疑問に、レンはへらへらと笑いながら否定した。
「残念ながら、聞き耳スキルが高いとその限りじゃーないんだよー。そんなの上げてるヒトなんか、なかなかいないけどねー」
レンはドアを閉め、シリカにちょっと待っててねー、と言って、ホロキーボードを表示させ、どこかにメッセージを打ち始める。
シリカはその背後で、ベッドに丸くなった。
レンの小さな背中を見ていると、現実世界の父親を思い出した。
フリーのルポライターであった父を。
不安はもう感じなかった。
シリカはいつしか目を閉じていた。
──どーしよ。
レンはベッドの上で、気持ち良さそうに寝ている少女を見ていた。
数分前、依頼人であるフラグスに、途中経過を報告して、振り向いたら、ビーストテイマーだった少女が、自分が寝るはずだったベッドを占領していた。
数十秒を費やして、どうにか思考を回復させると、とりあえず起こそうと眠っているシリカの体を揺さぶってみる。
だが「うにゅあ…」という謎の寝言を言うだけで、一向に起きない。
再び黙考。
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