暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
盗られたベッドと花畑
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してみるだけ、そんなふうに自分を言いくるめ、右手を振る。装備メニューを開いて、持っている中で一番かわいいチュニックを身にまとう。
柔らかい蝋燭の光が落ちる廊下に出て数歩進み、ドアの前で数十秒躊躇したあと、シリカは右手を上げて控えめに二度叩いた。
通常、全てのドアは音声遮蔽圏であって、話し声が洩れることはない。しかしノックの後三十秒はその限りではなく、すぐにレンのなぜかくぐもった声で応答があり、ドアが開いた。
口にヘンリコ──湖でよく釣れる紫色の皮膚をもつチョウチンアンコウのようなモンスター──の干物をくわえているレンが出てきた。
応答の声がくぐもっていたのは、これをくわえていたせいなのか。
武装を解除して簡素な灰色のシャツ姿をしているレンは、シリカを見るとわずかに目を丸くした。
「あれ、どーしたの?」
「あの──」
まだ食べているのかと、なかば呆れていたシリカは、ここに来て何も上手い理由を考えていなかったことに気付き、慌てた。
お話ししたい、では余りにも子供っぽすぎる。
「ええと、その、あの──よ、四十七層のこと、聞いておきたいと思って!」
苦しすぎるにも程がある言い訳だが、幸いレンは疑った様子を欠片も見せずに頷いた。
「ん。分かった。
階下
(
した
)
に行く?」
「いえ、あの──よかったら、部屋で……」
反射的にそう答えてしまってから、慌てて付け加える。
「あ、えっと、あの、貴重な情報を誰かに聞かれたらたいへんだから!」
「え……ん〜」
さすがのレンも困ったように──ただし口には干物をくわえたまま──頭を掻いていたが、やがて「まっ、いっか」と呟き、ドアを大きく開けて一歩引いた。
部屋は、当然ながらシリカの部屋と、まったく同じ構造だった。
右手にベッド。その奥にティーテーブルと、椅子が一脚。調度品はそれだけだ。
左の壁に据え付けられたランタンが、オレンジ色の光を放っている。
シリカを椅子に座らせて、自分はベッドに腰掛けると、レンはウィンドウを開いた。素早く操作して、小さな木箱を実体化させる。
テーブルの上に置いた箱を開くと、中には小さな水晶球が収めてあった。
ランタンの光を受けて輝いている。
「きれい………。それは何?」
「《ミラージュ・スフィア》ってゆーアイテムだよ」
レンが水晶を指先でクリックすると、メニューウィンドウが出現した。それを手早く操作し、OKボタンに触れる。
と、球体が青く発光し、その上に大きな円形のホログラフィックが現れた。どうやらアインクラッドの層ひとつを丸ごと表示しているらしい。
システムメニューから表示できる簡素なマップとはえらい違いだ。
「うわあ……!」
シリカ
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