第3話〜自由行動日〜
[1/10]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
七耀暦1204年 4月17日(日)
<<自由行動日>>。それは月に一度ある休日のようなものらしい。昨日のHRの際のサラ教官の話によると、厳密には休日ではないが授業は無い。何をするのも生徒の自由であるそうだ。トールズ士官学院は2年間の在学期間の割には授業数が多く、レベルも高い。また、軍のような教育方針を取っているのか休日も極端に少ないため、この日に部活動をより集中的に行っている部も多いらしい。また、来週の水曜日には実技テストがあるとも言っていた。とにかく有意義に過ごすことを勧められた。一日中寝るなどとのたまっていた教官が言っても説得力は皆無であったが。とにもかくにもそんな中で、ケイン・ロウハートは所属した水泳部に顔をだしていた。水泳部のプールは本校舎の裏口の中庭を抜けた右手に建つギムナジウムの中にある。まだ水泳をするのに少々肌寒い季節だが、水泳部部長である2年のクレイン先輩が寒中水泳だと言っていた。
「ケイン。そなたに短距離の計測を任せてもいいだろうか?」
「ああ、分かった。ただ、その、俺の短距離も後で計測してくれると助かるんだけど」
「お安い御用だ」
自分と同じく水泳部部員となったラウラに50アージュのタイム計測を引き受けたケインは、早速行動に移る。短い掛け声とともに水中へと飛び込むラウラ。フォームに乱れのないクロールで、なかなかの速さだとケインは思った。結果は22秒34。ラウラはまぁまぁだと言っていたが、速い部類に入るだろう。続いてケインが泳ぐ番になった。勢いよく飛び込み、凄まじいスピードで水中を進んでいく。タイムは19秒28。ラウラより3秒ほど速い結果となった。
「見事な泳ぎだった。そなたに遅れを取ったのは悔しいが」
「いや、ラウラだって十分速かった。それに、君の泳ぎはフォームが綺麗だったし、
俺も見習わないとって、素直にそう思ったよ。水泳、得意そうだな」
「フフ、私の故郷<<レグラム>>は湖畔にある町だからな。
鍛錬のために寒中水泳も日常的にやっていたから少しくらいはサマになるだろう」
「へぇ、って言っても少しどころじゃなかったと思うけど。
俺は村の中にちょっと大きめの湖があったんだ。
・・・まぁ、ほんの水遊び程度だったからまだ荒削り、かな」
水練といった形からは入らずに感覚で水泳を習得したケインは、自分はまだまだ未熟だと告げるが、ラウラに「いや、そなたの力強い泳ぎには感銘を受けた」と真っ向から言われ、はにかんだ様子で後ろの髪を掻く。その後、二人は互いに切磋琢磨するかのように昼の休憩時間まで一心不乱に泳ぎ続けるのだった。その様子を見ていた残りの水泳部部員のカスパルとモニカは口々に感嘆の声を洩らし、クレイン部長は「なかなか見所のあるやつらだな」と言っていたが、当人たちがその事を知
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ