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「ん? そうでもないぞ。うちの会社の機械で爆撃機をつくってたぞ。たしかB−24とかいうやつで、5,000機くらい」
「B−24というとコンベア社か。けれどそれが理由じゃないだろ? 戦争も終わっている。フォード社がこれから寡頭競争に入る航空業界に挑戦する噂は聞いてない」
「あー、うちの会社な経理にロバート・マクナマラつうおっさんをいれたんだよ。そのおっさんが陸軍航空軍に所属してた繋がりで、仕事引っ張ってきたんだよ。極東で、中華民国空軍が使う戦闘機の修理業務」
「その尻拭いか?」
「そんなところだ。あのおっさん、仕事は出来るし、部下ともども頭はいいが、人使いは荒くてな」
裕也はしばし思案した。
皇国陸軍の伝手で、中華民国空軍が使っている戦闘機は、アメリカから払い下げられたP−47「サンダーボルト」と聞いていた。もし修理や改修が行えれば、長く続きそうな中華内戦の需要をキャッチすることができそうだった。
また、裕也はフォード社が極東需要にかなり肩入れしていることを驚いていた。よほどライバルのGM社との競争が上手くいっていないのだろう。マクナマラといえば、容赦のないコストカットの噂が聞こえていたが、それもライバルとの競争を勝ち抜くためのものなのだろう。
修理を通して得られるノウハウもばかには出来ない。
「わかった。まあ、九州飛行機の方とは話してみるよ。だめなら、中島飛行機、今は富士重工か。そっちの伝手を紹介する」
「すまんな」
「かまうなよ。もともとフォード社の脛をかじって、ここに工場を立てさせてもらったんだ。そのくらいはやらせてくれ」
「マクナマラにも感謝か?」
「余剰機械を融通してもらった上に、下請け仕事ももらってるから頭は上がらんよ」
「それもそうか」
スコットがコーヒーを口に含んだ。仕事の話も終わり、社長室の空気も和らぐ。裕也は机からスコットと対面する位置にあるソファへ1枚の紙を持って移動した。
その設計図は裕也が戦中に線を引いていたロケットの図面だった。なんとなく、スコットには見せておいた方がいい気がしていた裕也は、この機会に見せてしまおうと意気込んで机に図面を広げた。
スコットはソーサーを机から持ち上げて、何事かと図面を覗き込んだ。それから、目を白黒させて混乱する。
「おい、これって、X2の図面か? 何でこんなもんお前が持ってるんだ」
今度は裕也が混乱する番だった。
「X2って何だ? こいつは、俺が引いたロケットの図面だぞ」
「お前、X2を知らないのか?」
「聞いたこともない」
「ドイツの作っていたロケット兵器だ。射程100キロを1トンの弾頭を乗せて飛ぶらしい。同盟国なら知ってたんじゃないか?」
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