悪魔の島編
EP.19 S級クエスト解決
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頬を緊張で強張らせるが……それは彼を止めるには至らない。
10cm、5cm、3cm、2cm――2人の唇の距離はどんどんゼロに近付いていく。
その時だ。
「おーい」
「!!」
急に掛けられた声に、夢見心地で時間の流れすら錯覚していた2人は我に返る。
エルザは目を勢い良く開けただけだったのだが、ワタルは違った。
「わ、わる……――!?」
事故とはいえ、押し倒した形になってしまっていたため、彼女に謝りつつも飛び退いたのだ。
しかしそこは狭い落とし穴の中。壁に後頭部を打ちつけてしまい、鈍痛かつ激痛で言葉にならない声で呻きながら蹲ってしまう。
「おいおい、大丈夫か?」
「ナ、ナツ!? あ、ああ、大丈夫だ、問題ない」
「顔赤いよ、エルザ。大丈夫?」
「大丈夫だと言ってるだろう!」
上から掛けられたナツとハッピーの心配そうな声に、エルザが慌てて対応する。
羞恥と怒りが入り混じった彼女の声は聞こえていたのだが……真っ暗な視界の中で火花と星が散って踊っていたワタルには彼らの姿は見えなかったため、手を振ることで返答とした。
そうこうしている内に、視界と意識が回復してきたワタルが見たのは……顔を熟れた林檎のように真っ赤にしたエルザが、様子を見に来たナツとハッピーと言い争いをしている姿だった。
「大丈夫そうだな、一応」
「びっくりしたわよ。いきなり落ちちゃって、そのまま出てこないんだもの」
「あー……悪い悪い。ちょっと疲れたみたいだ」
落とし穴から脱出したワタルは先程の事に動揺しつつも、グレイとルーシィに応える。
彼らの表情は呆れが少しと後は心配一色で、落とし穴の中の2人の様子を見られた様子はない。そのことに一旦ワタルは安心し、呆気にとられている村人の方に向き直った。
エルザはといえば……流石に何事も無かったようにとはいないようで、ぼおっとしているかと思えば赤面し、頭を振っている。とてもではないが説明できる様子ではなかったため、村人への説明は自然とワタルが引き継ぐことになった。
「どこまで話したか――――そうだ、遺跡だ。遺跡は調査したのか?」
「そ、それが……村の言い伝えで、あの遺跡には近付いてはならんと……」
「いや、誤解しないでくれ。責めてる訳じゃないんだ」
「う、む……」
なるべく穏やかな声で尋ねるワタルに村長は唸り、村人たちは隣の者とヒソヒソと話す。
どう見てもただ事ではない雰囲気に、ナツ、グレイ、ルーシィ、ハッピーが眉を顰め始めると、村長が重い口を開けた。
「……ワシらにもよく分からんのです。あの遺跡は何度も調査しようとしましたが、調査はおろか、近付く事さえできなかったのです」
「どういう事……? 近づけないっ
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