悪魔の島編
EP.19 S級クエスト解決
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まま語るワタルの言葉に絶句して俯くルーシィ。必然的に下がった視界に、血が出そうなほどに力を入れて握りしめたナツの拳が映る。
きっと仲の良かった魔導士なのだろう……そう思わせるには十分だった。
「……もう、あんな事は御免だ」
「「「「!」」」」
それまで、まるで機械の様に無機質だったワタルの声に震えが混じり、ナツ達はハッと顔を上げる。彼もまた、手が白くなるほど強く拳を握っており、その表情は誤魔化しきれない苦さで歪んでいた。
感情を押し殺そうとして無表情になっていたワタルは表情を歪めたまま口を開く。
「魔導士の仕事は、中には過酷なんて言葉じゃ済まない物もある。今回無事に終わったのは幸運に過ぎなかった……それだけなんだ。ルールがあるのはそれなりの理由がある。どうかそれを分かってくれ……」
仲間を失って悲しまない者などいない。
あんな悲劇はもうたくさんだ、とワタルの泣きそうな言葉は、どんな罵倒よりも重く彼らの心にのしかかった。彼らが落ち込み、黙ってしまったのを見た彼は静かに笑うと、声を掛ける。
「お前たちが無事で良かったよ」
「ッ! ごめん、なさい……!」
「ごめんなさい、ワタル」
「俺たちが悪かった……すまなかった」
「分かってくれればいい……ナツは?」
安堵したワタルの声に、ルーシィ、ハッピー、グレイは頭を下げた。喪失の悲しみは彼らにとっても、想像するのも痛いものなのだ。
一人返事を返さなかったナツも、それは同じだった。ワタルの問いかけに、彼は頭を上げると、後悔を滲ませた顔で口を開く。
「俺は……ただ、ワタルやエルザに追いつきたくて……」
「その気持ちは俺にも分かる。いつでも挑戦は受けるさ。俺だって、お前には負けたくない」
「……ああ!」
ワタルが穏やかに笑いながら言った言葉に、ナツは腕で顔を拭うと陽気に笑った。
「こっちは終わったぞ……どうしたんだ、お前たち」
「いや、何でも……さて、お説教はこれで終わり! 帰るぞ、お前ら!!」
ちょうど村長との話が終わったのか、エルザが話しに加わると、ワタルは手を叩きながら明るく言い放ち、エルザを従えて歩き出す。他の者も、慌てて立ち上がって彼らの後に続きながら帰還の手段である海賊船に向かうのだった。
「反省しているところ悪いが、ギルドの処分がある事も忘れてくれるなよ?」
「まあ、初犯だし、俺からも説教したし……一応弁護はするつもりだがな」
「私はそのつもりはないがな。まったく、お前はそういうところが甘いんだ」
「あー……こういう性分だし?」
「改善の兆しくらい見せんか!」
人差し指で頬を掻くワタルに怒鳴るエルザ。2人の様子をよそに、他の者は罰の内容に戦々恐々としていたのだが……ギルドが近づく
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