悪魔の島編
EP.19 S級クエスト解決
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さらに言うなら、ウルティアの誘いへの動揺と彼女との激闘もまた、自分では気付かないままにワタルの魔力を大きく消耗させていた。
魔法とは精神に大きく直結するものだ。そのため、魔力に対する感受性が異常に高いワタルの精神の魔法発現への影響は、普通の魔導士より大きく表れる。
感受性が高いという事は、言い換えれば繊細という事で、他人にとっては大した事ないものでも、精神に大きな影響を及ぼしやすいという事だ。
これがワタルの最大の弱点といっていいだろう。
さらに……エルザへの想いですら、この時はワタルの心に負担となって表れた。
エルザが自分にとってどういう存在なのか――極小さなものではあるが、モヤモヤを感じていたワタル。加えて、先程のルーシィの言葉はワタルが思っていた以上に心を大きく揺さぶって精神を乱し、消耗を加速させた。
そして、魔力の枯渇が魔導士の身体にも悪影響を及ぼす事は、魔動四輪のスピードを長距離に渡って出し過ぎたエルザがどうなったかを思い出してもらえれば分かるだろう。
長々と説明したが、一体何が起きたのかというと――エルザの手を掴んだのはいいが、思ったより体に力が入らなかったワタルは彼女を支えきれず、落とし穴に落ちてしまったのだ。
「いてて……大丈夫か、エル、ザ――ッ!?」
「あ、ああ……ッ!」
エルザの上半身を覆う鎧に身体を打ちつけ、衝撃と痛みに顔を顰めて呻きながら目を開けると、ワタルは硬直した。
倒れこんだ衝撃で絹の様に柔らかく舞い、情熱的な夕陽を連想させる美しい緋色の髪。
剣を握り、数多の敵と戦ってきた姿からは想像もできないほどに華奢な首。
健康的な赤みを帯びた頬は滑らかで、見ただけで柔らかいのがはっきりと分かる。
髪色とはまた別種の赤色を持つ唇は瑞々しく潤い、鼻筋も綺麗に通っている。
互いの姿が映るほどに近づいた目は、微かに潤んで優しい光を放っているようだ。
傍から見れば、ワタルがエルザを押し倒しているようにしか見えなかった。
呼吸すら止めてしまうほど、間近で見た彼女は魅力的で、ワタルは理性を殺しかねない光景に目を離せないでいた。
このまま彼女を自分だけのものにしてしまえ。
脳裏でささやく凶暴な獣の声に、ワタルは必死に抗った。
「……」
「――ッ」
ワタルが理性と独占欲の狭間で葛藤しているその最中……彼の下敷きになっているエルザはゆっくりとその瞳を閉じる。
瞑目した彼女は聖母のように美しく、侵しがたい――そんな理性の叫びは既に情けなくなるくらいあっさりと、脳裏でささやく本能にかき消されていた。
つばを飲み込み、ワタルはゆっくりとエルザに覆いかぶさっていく。
それが分かったのか、エルザは赤く染めた
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