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ゾンビの世界は意外に余裕だった
9話、岩川を渡る
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ん、アンドロイドもロボットも血液などで普通の病気に感染などしないが、可能な限り接触せず、接触する場合も手袋などを使うよう指導してある。命令に忠実な五号車の連中は適切に排除するだろう。その後、民家を放置しながら前進する。

「前方に黒煙です」

 くすぶった炎からでる一筋の黒煙といったところだろうか。念のため偵察させるかわざわざ降りて偵察させるほどでもないだろう。

「一号車とニ号車で偵察にむかえ」

 二台が前進して間もなく通信報告が入った。

「自衛軍の多目的四輪車を一台確認。他に燃えている車両五台を確認。周辺に人影はありません」

「大佐、どう思う?」

「調査するなら反対側まで一、ニ号車進ませ、警戒させるべきでしょう。燃えている車は車道を塞ぎ邪魔ですが、通れないことはありません。調査も前進も可能です」

「よし、一、ニ号車は前進して反対側に行け。そこで車から降りて警戒態勢を取れ。三号車からは手前で止まる」


 一、ニ号車の部隊が配置についてから、俺は車から降りて、護衛に囲まれながら自衛隊の多目的四輪車に近づいた。

「明らかに致死量の出血です」

 医療アンドロイドの衛生兵一号が多目的四輪車から流れ落ちた血だまりを見て告げる。

 片手に拳銃を持ったレムルスが車の運転席側のドアを開けると、眉間を自分で撃ち抜いた兵士が地面に落ちる。

「ボス安全です」

 レムルスの安全という報告は保安上間違いないだろうが、俺の精神衛生上の安全が考慮されていないことは確かだ。

「遺体は脇に置け。武器や書類、道具はまとめよ」

「この車はガス欠です」「その状況でゾンビに囲まれたのか……、衛生兵一号。兵士が死因と死亡推定時刻はわかるか?」
「死亡日時は昨日の午後三時頃と推定します。死因は眉間を弾が貫通したことですが、その前に別の銃弾で腹部に重傷を負っていたようです」

 衛生兵一号が内臓の温度を計り終えると、俺は手を合わせてから手袋をつけた手で兵士の遺体をまさぐった。

 財布、手帳、通信機、地図、拳銃、お守りなどを取り出す。彼の名前は高瀬二等軍曹。お国のために戦ったかもしれない人だ。丁重に扱おう。 俺はキャリーに写真をとらせ、死亡推定日時と名前をメモした紙と財布、お守りをビニール袋に入れる。

 拳銃には弾が二発しか残っていない。俺はメモをキャリーに渡して情報を得るよう命じた。

「そっちは何か見つかった」
「弾のない自動小銃だけです」

 俺は若干がっかりしながら捜索活動の打ち切りを命じた。多目的四輪車はガソリンを入れて確保。七号車と八号車の間に入れる。最初のゾンビと同じようにビニールに包んで道端に置く。

「ボス、道路の確保に三十分ほどかかるそうです」 
「わかった」

 車の小火を消化して道の清掃が始まった。帰りのためにもある程度、道路はクリアーにしておきたい。
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