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ゾンビの世界は意外に余裕だった
9話、岩川を渡る
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るという触れ込みに反して、精々壁から三十センチを把握できるだけだけだった。

 まあ、生存者を確認できないと言っても、あくまでも遮蔽物の成分次第のセンサーを使って、人間を発見出来なかったという意味に過ぎない。

 とりあえず、民家には壁によりかかっていたり玄関の覗き穴を見ていたり、窓から外を覗いていた人間はいなかった。今はそれで十分だ。

 それにしても今日は朝から雲一つない快晴となった。ゾンビがいなければ絶好のピクニック日和だろう。ハヤブサ型の空飛ぶアンドロイドを偵察に出そうと思ったのだが、教授達の実験結果を改めて見たらまだ車に追いつけないレベルだったので、停車した場合に周囲を偵察するよう命じた。

 南の自然公園に向かう小道が何本かあることに気づく。地図だと広大な敷地を南北に貫く車道はない。まあ、法律を無視すれば通れる道があるかもしれないので、そのうち偵察隊を出すかもしれない。

 特に自然公園の小高い丘からは県道が一望できるため、昼間に行動すれば動きが丸見えであり、余力があるなら監視すべきだろう。

 県道にさらに進むと民家が少しづつ増えてきた。これも全部放置だ。

「乗用車一台を道の真ん中に発見。無人です」 

「少し先で止まる。大佐、後続部隊にどけるように伝えろ」
「了解です。ボス」

 横を通り過ぎる際、無人の車に血がこびりついていることに気づいて、若干気持ち悪くなったが見なかったことにする。アンドロイド達が道路を綺麗にしている間、俺は携帯電話の電波をチェックした。圏内のはずなのだがどうやら電波が届いていないようだ。

「ボス、車の処理は完了です。中で四人の遺体を発見してビニールに包みました。身元がわかりましたので遺品は別にしてあります」

 余裕があるなら遺体をビニールに入れておき、いずれまとめて火葬してしまうつもりだ。


「前進するぞ」

「二階建ての一軒家を確認」
「おばあさんを見かける家か……、先に進むぞ」

 挨拶すら交わしたことのないおばあさんだったが、通勤途中に花壇に水を撒いている姿は印象に残っていた。俺はまだまだ調査は始まったばかりと自分に言い聞かせ、ノスタルジックになりそうな気持ちを振り払う。

「ボス、前方に人影を確認。ゾンビです」 
「待機せよ」
「了解。待機します」

 俺はようやくリアル・ゾンビを見かけた。二十歳くらいのもてそうなハンサムな青年のゾンビは、血だらけでゆっくりと歩いていた。動くご遺体に失礼だが、あんまり気持ち良い存在ではない。ゾンビになってから時間が経っていないのか、最近インターネットの動画で見たゾンビの大半より綺麗だ。すこし血の気が引いた俺は軽く黙祷して立ち去る。

「早歩きではないな」
「はい」

「よし、五号車に排除させる。死体はビニールくるんで道の端に置くように伝えよ」

 もちろ
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