暁 〜小説投稿サイト〜
アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第18話「Uへの道/危険なクマ野郎」
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
が、死んでいるわけがないことは

明らかだった。

―――まさか、暗視の魔法か何か?

イダの感想は的を得ていた。猫の目のように瞳孔を開き、僅かな光を捉えて暗視を

可能にする「猫の瞳」(キャッツアイ)という魔素魔法の一つだ。

「上位の魔法「梟の耳」なら、正体も分かりそうなんですけどね。

とにかくまだ大分離れているので大丈夫です。早く離れましょう」

「わかった。とにかくさっさと逃げちゃ」

ギン!

…気配が変わった。周囲に対して無差別に向けられていた威圧が、指向性を持って

こちらを睨んでいるのがイダにもわかる。

「気づかれた!?やばいぞ!この反応は、間違いない!ミスリルベアーだ!!」

姿を見もしないでリックはそう断言する。

そして、その言葉が正しいことは数瞬後にわかることになる。

ドゴォン!!!

「ぶっぁぁぁぁ!?」

ドシャアアアッ!!

巨大な槌で壁を殴るような音がして、シドの胸当てが無残に凹み、その巨体が

草むらに突っ込んで擦過音を盛大に立てた。

「にゃあああ…何、こいつ…!?嘘でしょ。北の…樹氷が生えるようなところにしかいない

凶悪モンスターじゃにゃい!!」

「ええ…私も書物でしか見たことがありませんでしたけど…まさか」

グウェンとフェーブルの目に絶望が宿る。こんなもの相手では逃げることも出来ないと。

―――ミスリルベアー。緑がかった銀色の体毛を持つ熊の魔物である。

分厚く硬い筋肉と、それ以上に硬い体毛…ミスリル、つまり魔力を帯びた銀に似た鉱石で

出来た体毛を武器と防具とする魔物である。

我々の世界の灰色熊がそうであるように、強力な対物銃がなければ相手にならないように

この熊によく似た魔物は、魔法の武具を持たない冒険者ではどれほど熟練でも倒せない

と言われるほどの強力なモンスターなのだ。

その大きさはシドよりも一回りほど小さいが、シドがやすやすと吹き飛ばれたことを

見ても分かる通り、見た目通りの膂力ではない。

「コルルルルルルル…」

まるでエンジン音のような唸り声と、体毛と同じく月の光を受けて銀に輝く瞳の魔物は、

今しがたまでシドがいた場所で、イダを睨みつけていた。

「まずい!逃げろイダ!!」

ターゲットは自分。そう思った瞬間、もうだめだと思った…が、彼女の命運は

尽きてはいなかった。

「ぶぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

機関車のような雄叫びを上げて、起き上がったシドが突進する。

その手には、既に宿で見せた巨大な鉄棍が握られていた。

イダの頭を削り飛ばそうとしていたその巨大な爪は鉄棍によって上に弾き飛ばされる。


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ