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トワノクウ
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第十四夜 常つ御門の崩れ落つ(三)
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「……妖混じりのくうに、妖を殺す場面を見ろって言うんですか」
「俺達は人間で奴らは妖。別に気にすることもないだろ。妖相手なんだから」

 ――この、人は。
 潤たち排除する側へは先ほど理解した。だが、今や排除される側も持つくうは、はいそうですか、と認められない。

「今さらになってくうを自由に行動させるメリットは?」
「それは……俺が離れたら危ないから、せめてそばに付いてたいと思って」
「じゃないでしょう。陰陽寮も結界はあると聞いてます。そもそも、妖かもしれないくうを、潔癖症の坂守神社が守るはずありません」

 潤は気まずい表情を浮かべる。ばれたか、とか、しまった、がしっくり来る顔だ。
 腹芸が下手なのは相変わらず。それを笑顔でごまかさなくなったのは、進歩か、退化か。

「くうは餌でしょう? 天座をおびき出すための」

 わざわざ天敵の坂守神社までくうに会いにきた梵天を見れば、梵天がくうに含みがあるのは明白。くうを守りの浅い外へ出せば、梵天はまた接触を図る――そう予測しているのだろう。

「そうならそうと素直に言ってください。こうして軟禁してるんですから相応の対応をしてくれないと、私も自分を扱いかねます」
「――怒ってるのか?」

 今さらそれを聞くか。

「エサ扱いは平気です。私も梵天さんには真正面から堂々と会いたいですから、その機会をくれたのは感謝します。素直に言ってくれなかったことには怒っているかもしれません」
「……銀朱様たっての願いなんだ」

 銀朱のため、か。くうは溜息をついた。潤は主人のためなら友達に酷い扱いをしても許されると本気で思っている。悪いのは非道をさせる他人で自分は悪くない。そのシナプスをぶち切りたい。

「出発はいつ?」
「一時間後ってとこだ。準備があるならしてくれ。迎えに来る」

 潤はすばやく刀を持ち直して退出した。




 一人きりの空間で思考の空白に身を任せていると、再び襖が開いた。朽葉だった。おかえりなさい、と告げると、ただいま、と答えてくれた。

「朽葉さん、さっきね、神社の潤朱が来たんです」

 くうは潤の「頼み」を包み隠さず朽葉に説明した。朽葉の表情は険しくなった。

「行くのか?」
「行きます」

 薫の体調も潤の職務もくうにはどうにもできない。ならばせめて、この世に両親がどう関係したか、ひいては梵天がくうに何をさせたかったかを知り、どう動くかを決める。くうはそう方針を出したのだ。

「そうか……」

 朽葉は目を伏せてから、持ってきた包みをくうに差し出した。包みを開くと、着替えの着物に交じって、くうが最初に来ていた黒いドレスと鍔広帽子が出てきた。

「入用かは分からなかったが念のため持ってきた。着たいなら着ていく
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