ターン13 正義の闇と運命の光
[1/16]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「はー………今日も結局三沢には勝てなかったか」
もはや誰もいなくなったレッド寮で、聞く人がいないことはわかっているけれどひとり呟く。もっとも、別に翔が光の結社に入ったわけではない。危険が及ぶ前にと数日前からラーイエローに避難させたのだ。なにしろ、この我ながら異様なまでの敵意がいつ何時無関係の翔の方に向くかわかったものじゃない。誰か人がいると見境なく怒りが込み上げてくるけど、こうして自分以外誰もいないところにいるうちは、ある程度落ち着いていられる。
………今の僕は明らかに何かがおかしい。誰かこういうことが相談できそうな人に相談したいけれど、稲石さんとは喧嘩したまま気まずくて連絡が取れない。というか、多分今あの人の声を聞こうものならまたあのわけがわからない敵意が湧いてくることは容易に予想できる。ユーノだって今はいない、あの裏切り者が…………ああ、まただ。心の中にたまって来たどす黒い怒りを無理やり締め出し、平常心を保つ。他に頼りになりそうなのはチャクチャルさんだけど、あの神様もどうも最近どこかに行っているらしく、いくら探っても全然見つからない。思えば最後にチャクチャルさんの声を聞いたのも、稲石さんと喧嘩したあの日だ。元気にしてるんだろうか。あるいは、まるで言うことを聞かない僕に愛想を尽かしたのかもしれない。
「いや、だとしたらまずはこっちから、かな」
誰もいない部屋に、また僕の声だけが響く。僕のデッキの精霊たち。エクトプラズマーやデストラクト・ポーションなんて恐ろしいカードはデッキに入れたくないし使いたいとも思わないので、こうして我に返る時間のたびにデッキから抜こうとはしている。しているのだけど、そのたびに心の中で何かが抵抗してどうしても抜けない。モンスターを犠牲にするようなスタイルは嫌だって僕は言ってるのに、その声は少しでも相手にダメージを与えるためならモンスターごときに一々かまうなって言ってくる。どれほど抵抗しても、僕一人しかいないこの状況だとどうしてもその声に勝つことができない。
かといって、他の人を呼ぼうものなら本末転倒なのだ。
「はー………ごめんね」
誰に向けての謝罪なのか。実は自分でもよくわからない。ただ、何かに対して謝らなければいけない気がしたから謝った。それだけのことだ。すると、まるでそれを待っていたかのようなタイミングで学生服のポケットにねじ込んでおいたPDLが鳴る。取り出そうとすると、何か別のものに手が当たった。一瞬なんだろう、と思ったがすぐに思い出した。そういえばあのノース校とのデュエルの時、天田からなにか預かってたんだっけ。あの時の彼の予感は最悪の形で的中しちゃったけど、だとするとこれは一体なんだろう。いや、まずはメールか。
えー、なになに?ふむふむ。メールの送り主は夢想からで、女子寮に今届い
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ