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ソードアート・オンライン 〜呪われた魔剣〜
神風と流星
Chapter1:始まりの風
Data.1 邂逅

[2]次話
 綺麗だ――――

 戦場で舞い踊るように剣を振るう彼女を見て、俺はそう思った。

 敵の攻撃を受け、いなし、躱す。そして斬って斬って斬る。その動きすべてが洗練されていて、ただ《速かった》。

 俺の友人で、知っている中で最強の剣士でもある《キリト》でさえ、あそこまで速くはない。

 しばらくそのまま呆けたようにその姿に見とれていたが、不意に彼女がピンチに陥った。

 四方をモンスターに囲まれ、ステップ回避が出来なくなったのだ。今はまだパリングと受け流しで捌いているが、それも時間の問題だろう。

 ここでようやく俺はハッと気づき、慌てて懐に下げていた投擲用の投げ針を四本手に取り、手を肩の位置まで動かす。

 するとシステムが初期モーションを感知し、俺の手を光が包み、不思議な加速を得て再び動き出す。

 《投剣》スキル四連撃技、《クワトロスター》。

 派手な黄色の《ライトエフェクト》を伴い、《システムアシスト》による補正を得て、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、と四本の投げ針が順に飛んでいく。

 それらはすべて彼女を取り囲んでいたモンスター――――《ルインコボルド・トルーパー》の弱点を正確に貫き、モンスターの体を霧散させた。

 突然の援護に彼女は驚き、こちらに振り返る。

 振り返った彼女を見て俺は思った。

 可愛いと。

 後姿だけでもなんとなくわかっていたが、実際に見てみると想像以上に可愛かった。

 焦げ茶色の髪は短く整えられ、紺碧の瞳には戸惑いと――――好奇心?が浮かんでいる。

 彼女は数秒俺を見つめた後、一言。

「ありがとう、《ルリ》ちゃん」

 どうして彼女が俺の名前を知っているのかとか、色々思うところはあったが、まずは一番大切なことを言うことにした。

「俺は お と こ だ!」

 短く切り揃えられた艶やかな黒髪を振り乱し、よく「女の子みたい」と言われる顔に怒気を浮かべ、俺は絶叫した。

 これが後に《神風》と呼ばれる少女《シズク》と、そのパートナーである俺こと《流星》の《ルリ》の出会いなのだが、この時俺は、こいつと組むことになるなんて微塵も思っていなかった。

 ――――それも、近い未来に。
[2]次話


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