トワノクウ
第十四夜 常つ御門の崩れ落つ(二)
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ばやってられない。
潤は襖を閉めて部屋に入って、くうの前に腰を下ろした。片膝を立てた雑な、あるいは男らしい座り方に、どうしても違和感を覚える。
「どうして陰陽寮にいるんですか」
「ここへのメッセンジャーは大体が俺だからな。今回も、篠ノ女に頼みがあって来た」
「――、神社関係のご用事ですか」
不死の呪いという異質がさらに発覚した今になって、筆頭侍官の彼がくうに頼み事をするなど不自然だ。潤がくうの異質を放置する理由で妥当なものは、坂守神社の、それも銀朱か真朱に関わることとしか思えない。
やはり潤は肯いた。「今日の昼に別口であった討伐で損失が出た。一旦は退いたが、敵の疲弊を逃す手はない。今夜もう一度討って出る手筈になったが、人手が足りないんだそうだ。だから今夜は俺も出る」
「頼られてるんですね、姫巫女さんに」
すると潤は初めて表情を緩めた。
「朱の字を頂いたからにはお応えしないとな。潤朱には守り通す、って意味もあるからな」
「遵守、にかけてるんですね。掛詞の名前なんて素敵」
すると潤がぱっとくうの前に身を乗り出してきた。
「そう思うか? 本当にっ?」
「は、はい。思います」
「そうか、そうだよなあ」
手放しで喜ぶ潤に、かつての中原潤の面影が覗いた。子犬のように嬉しいことには手放しで喜ぶ姿を、かつてくうはとても愛しく感じた。
「わざわざ帰る報告にきてくれたのではないでしょう?」
「あ、いや、それもそうか」
潤は居住まいを正した。
「頼みってのは、この討伐に篠ノ女に一緒に来てほしいってことなんだ」
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