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無欠の刃
下忍編
許し
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のだ。
 なのに、その少女が自分と同じように弱かったと聞いたイナリの瞳が、こぼれ落ちそうなほど、真ん丸になって見開かれる。
 そんなイナリの視線を受け止め、サクラは優しく笑った。
 わかろうともしなかった。分かりたくなんてなかった。いつまでも夢見る乙女のままで居たいと、そう思っていた。大人になんてなりたくない、忍になんてなりたくないと、そう思ってきた。
 『忍』で居続けたいから。
 そんな生き方があるのかと、聞いたとき、サクラは鈍器で殴られ続けたような衝撃が頭を揺らし、襲い、そして今までの価値観すべてを粉々に壊された。
 けれど、カトナにとってはそれは当たり前で、それはとてもとても綺麗な夢であって、汚したくない、キラキラとした輝きをもった、愛すべきものだったのだ。
 揺るぎなく、しっかりと一本筋通った大切なものだったのだ。

 サクラがその時自分を恥じたのは、自分がカトナのように広い価値観を持っていなかったからではなく、曖昧なまま、忍びでいたからだ。
 ふらふらと、自分の意思を決めず、あっちにいったり、こっちにいったり。好きな人も、おしゃれも、夢も、何もかもその場のノリに合わせて、流れて、自分の意見を持ついのに憧れ、そのくせ、変わろうとすらしなかったからだ。
 口ばっかり。そんな子供のサクラ。
 サバイバル演習の時には、露骨に足を引っ張った。あの作戦には、絶対カトナとサスケが必要だったけど、サクラが居なかったところで支障は出なかった。
 それでも二人は、サクラを仲間と認め、『くのいち』だと言ってくれた。
 強者であるカカシに立ち向かおうとしたからだと、本当は怖くて逃げ出そうとしていたサクラの逃げ道を塞ぐようにそんな言葉を吐いて…、でも、それが心地よかった。
 逃げていたことを許してくれるのだと、分かった。立ち向かったことを評価していてくれた。
 逃げても、もう一度立ち向かえばいいと、許容してくれた。

 「怖かったら、何度、逃げちゃってもいいのよ。それでも、逃げても。もう一回、もう一度立ち向かえたら、それでいいのよ」

 そういって笑ったサクラを見て、弾かれたようにイナリは立ち上がり、握られていた手を振り払って怒鳴る。

「でっ、でも逃げたって責められたら…?」
「誰かに責められた分、許してもらえばいいのよ」

 即答され、イナリが言葉をつまらせる。目線を合わせるようにかがみ、下から伺うような目を向けたサクラに、必死にイナリは反論する。

 「ゆっ、るす人がいなかったら!?」

 それでも、イナリはその言葉を否定しようと言葉を紡ぐ。
 立つのが怖いといえず、誤魔化すようにして言葉を重ね、逃げ道を何重にもつくる。
 そんなイナリに向けて、サクラはゆつくりと言う。安心させるように、優しく落ち着いた声で
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