番外編
その7 変えられないの?
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舞は時空を超え、何度も大切な彼らの前に現れる。
紘汰の前に、光実の前に、戒斗の前に。
自分自身にさえ語りかけた。
運命の分岐点で、何度も、何度も。
サガラの言う通り、思う言葉を口にすることも、思う行動を実行に移すこともままならなかった。
それでも、何度となく試み続けた。
全ての始まりと言ってもいい戦極ドライバーが完成した日に遡り、最初のベルト被験者となった貴虎の夢にも干渉した。
「あなたは、運命を選ぼうとしている」
(このままじゃ、貴虎さんのベルトを着けたみんなが傷だらけになる未来が来ちゃうの。お願い、考え直して、貴虎さん!)
貴虎は戸惑いを見せたが、すぐに表情を厳しいものにした。
「人類を救うためだ。俺自身が犠牲になるとしても、止まるわけにはいかない」
ああ――舞は嘆息する。そうだった。ガレージで紹介された時から何となく分かっていた。彼も紘汰と同じ部類の人間なのだと。見も知らない他人のために命をなげうてる人なのだと。
紘汰の時と似た胸の痛みを抱え、舞はその時空から出た。
目覚め、不思議な夢に思いを致し、さらに決意を固める貴虎を残して。
舞は咲の下にも行った。変身する時ではなく、もっと後、ヒマワリの錠前で変身する気があると言った時にだ。
ヒマワリのロックシードを使い続ければ、咲は「大人になれないかもしれない」と湊は言った。それが何を意味するかは、はじまりの女となった今でも分からない。だがそれがもし最悪を意味するならば、舞は咲の運命を変えねばならない。
「その花を咲かせてしまえば、もう二度と、後戻りはできない」
(気づいて。咲ちゃんはヒマワリアームズを使っちゃだめなの。それを使ったら、大人になれずに死んじゃうかもしれないんだよっ)
しかし、やはり、紘汰たちの時のように、咲にも舞の真意は伝わらなかった。
「――それでもあたしは、帰るって決めたんだ」
俯きながらではあるが、その声には、コドモとは思えないほど強い意志が込められていた。
(咲ちゃんもダメだった)
舞は沈痛な想いでその時空から外へ出た。
残されたのは、不思議な邂逅に首を傾げる咲だけだった。
舞は試みる。試み続ける。黄金の果実の力を使い、大切な人たちの行く道に干渉する。
運命を変えたい。変えねばならない。
戒斗のために。光実のために。貴虎のために。咲のために。――紘汰の、ために。
それでも運命は変わらずに終局へと流れていく。
(あたし、どうすればいいの……?)
時空の狭間に散った涙は、小さな粒となって消えていった。
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