第四話 由比大尉!正雪の方じゃないからな!!その十
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「その距離で的の真ん中とかな」
「しかも後ろ向きだからな」
「五百メートルなんてな」
この距離もだった。
「弓の届く距離じゃないだろ」
「幾ら何でも無理だぜ」
「那須与一でもな」
「それこそ」
誰もがこう思っていた、だが。
その男由比は実際にそうしていた、そして。
弓をだ、振り向きざまに。
放った、弓は光の如き速さで的に向かい。
その五百メートル、最早弓道の距離ではないその距離をだった。
全く衰えることなく突き進みだ、何とだった。
的の中央を見事に貫いた、そして。
それを見てだ、誰もが唖然となった。
「五百メートルを」
「あっという間に」
「しかも真ん中を」
「貫いた」
「嘘みたい」
「嘘ではない」
その由比も言うのだった。
「これが弓道だ」
「そんなことも出来るんですか」
「神技なんてものじゃないですけれど」
「今みたいなことが」
「出来るんですか」
「そうだ、その他にもだ」
ここで鎧、平安時代の大鎧が十運ばれてだ、一列に縦に並べられた。しかしその鎧もだ、由比はというと。
弓矢で貫いた、それも一本の矢でだ。十の大鎧を貫きその向こうにある的の真ん中を貫いた。そして他にもだった。
空中に投げられた的をだ、全てだった。
射ち落とした、二十出されたが全て。
馬に乗りそれもしてみせた、自分の高さにあるものもだ。
最後は弓さえ使わずにだ、的の中央に指から気を放ち。
射抜いてみせた、誰もがそれを見て言った。
「まさかあれが」
「弓道の究極の奥義」
「弓を使わずに射る」
「それなのか」
「弓はだ」
何かとだ、由比も言う。
「弓を使わずして射る、それこそが」
「究極の奥義」
「そうなのですね」
「まず弓の腕を極め」
そして、というのだ。
「そのうえで正しき心を極めれば」
「その時にですか」
「それが出来る様になるのですか」
「心技体の全てを極め心身を清め」
そのうえでだった。
「悟りを開くのだ」
「悟りですか」
「それを開けば」
「おのずとこれが出来る様になる」
「弓道のその奥義が」
「究極のそれが」
「出来る様になる」
まさにというのだ、そしてだった。
観ている国民の一人がだ、ふとこんなことも言った。
「これって確か名人伝だよな」
「ああ、中島敦だよな」
「列子か何かでもあったな」
「そういえばそうだったな」
「どれも作者が読んだ作品か」
「列子の方は漫画だったな」
そちらのジャンルだった。
「漫画の方で読んでそれで書いたのか、今」
「それからヒントを得たのか」
「しかし中島敦なあ」
「ベタだな」
「お約束作家の一人じゃねえか」
誰もが作者批判に入るのだった。
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