第百五十七話
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第百五十七話 虫歯に困ったことが
赤音はかなり熱心に歯を磨いていた、その彼女にだ。
ジップとハリーがだ、彼女が勉強をしていて丁渡一段落したところでそれぞれの肩のところからこう問うたのだった。
「ご主人歯磨き丁寧だけれど」
「忘れないけれど」
「それはどうしてなの?」
「何かあったの?」
「痛い思いしたからよ」
少し眉を顰めさせて言う赤音だった。
「小学一年の時にね」
「その時になんだ」
「虫歯になったんだ」
「それでなんだ」
「今歯を磨いてるんだ」
「そう、真面目にね」
そうしているというのだ。
「また虫歯になりたくないからね」
「成程ね」
「昔そうなって」
「もう二度となりたくない」
「そう思うからこそ」
「あの時は乳歯だったけれど」
生え替わる前だったというのだ。
「今は永久歯だから」
「うん、もう生き替えることはないから」
「余計になんだね」
「歯には注意して」
「磨いてるんだ」
「そうしてるのよ」
まさにその通りだというのだ。
「虫歯になって痛かったから」
「そんなに痛かったんだ」
「二度となりたくない位に」
「もう思い出したくない位にね」
そのレベルだったというのである。
「だからね」
「歯を磨いて」
「二度と虫歯にならない」
「そういうことだね」
「用心して」
「それで毎日」
「あのね、本当に痛いから」
リアルな言葉だった、実に。
「寝られない位なのよ、いつも痛くて」
「えっ、ご主人が寝られなくなるって」
「それは相当だね」
よく寝る赤音がとだ、驚く二匹だった。
「というかそれって」
「どんなのなんだか」
「ちょっとね」
「わからないよ」
彼等ですら想像出来なかった、とにかくよく寝る赤音がそこまでなるという痛みがどういったものかということに。
第百五十七話 完
2014・8・8
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