第1章 双子の兄妹
1-4 禁断の時
禁断の時
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明くる8月3日木曜日。
「あんたたち、ケンカでもしてんの?」
夕食時、母親が切り出した。
「え?」マユミが手を止めた。「な、なんで?」
「今朝から会話がほとんどないじゃない」
「そうだっけ?」
「あのね、兄妹ってのは一生で一番長くつき合う人間なんだからね。いがみ合ったりしたらきついわよ」
「べ、別にケンカなんかしてないよ。なあ、マユ」
「う、うん。そうだよ」
「ならいいけど……」
しばらくの沈黙の後、ケンジがマユミに目を向けた。「そうそう、また学校でチョコもらったから、後で食べに来ないか? マユ」
「ほんとに? いくいく」
「誰からもらったっての?」母親が怪訝な顔で訊ねた。
「だから友だちだよ」
「あんたにチョコくれる友だちがいんの。誕生日でもないのに?」
「いいじゃないか、母さん。あんまりしつこくすると嫌がられるぞ」父親がビールのグラスをテーブルに戻して言った。
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「ごちそうさま」マユミが食器を持って立ち上がった。
「俺も」ケンジも後に続いた。
二人がダイニングを出て行った後、母親がため息をついた。「何だかうわべだけ仲良くしてるような気がするんだけど、あの二人」
父親が言った。「気にしすぎだ」
先に二階に上がったケンジは、ドアの前で後から上ってきたマユミに声を掛けた。
「マ、マユ、チョコ、一緒に食おうぜ」まるで好きな子に告白できずにいる少年のようにおどおどしながらケンジは赤くなって言った。
「う、うん」
「あ、あの、お詫びと言うか、何と言うか……」
「あ、あたし気にしてないよ、ケン兄」マユミはぎこちなく笑った。「今日はケン兄の好きなコーヒー淹れてくるから待ってて」
「そ、そうか。ありがとう。マユ」
「ケン兄の好きな『ヒロコーヒー』のスペシャルブレンド、今日買ってきたんだ」数日前と同じようにマユミはケンジの部屋の同じ場所にぺたんと座って、デキャンタから二つのカップにコーヒーを注いだ。
「ほ、ほんとか? お、俺のために?」
「うん。いつもチョコごちそうになってるからね」
「すまないな。でもマユ、おまえコーヒー苦手じゃなかった?」
「いいの。たっぷりミルク入れて、砂糖も入れて飲むから」
「ご、ごめんな、無理させちゃって」
ケンジはずっとおどおどしていた。
「このチョコ、」マユミがアソートの箱を手に取った。「この前のと同じだね」
「そ、そうだっけ?」
「友だちからもらったって嘘でしょ。ケン兄」
ケンジは肩をびくつかせた。
「自分で買ったんでしょ?」
ケンジは小さな声で言った。「う、うん。お、おまえ、好きなんだろ? メリーのチョコ……」
マユミは微笑んだ。「ケン兄優しいね」
「だ、だって、お、俺、昨夜おま
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