22話
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、ボクと彼女の境界が崩れていく気がした。
ボクの感情と、彼女の感情の境が、なくなっていく。
感情は行動原理を決定づける原始的な種で、その喪失は自己の喪失を意味する。
曖昧になる自己認識の中、漠然とした危機感がボクを突き動かした。
「ラウネシア!」
叫ぶ。
途端に、ラウネシアの感情に変化が訪れ、森中に広がっていた一つの巨大な感情が霧散した。
全身の力が抜け、ボクはラウネシアにもたれかかるように倒れこんだ。
『カナメ?』
ラウネシアが動揺するのが、感応能力でわかった。
自然と、息が荒くなる。気がつけば、全身が汗がぐっしょりと濡れていた。
感応能力でこれだけの感情を拾い上げるのは、初めてだった。
「……あまりにも強い感情を向けられると、感応能力の許容を超えるようです」
『ごめんなさい。カナメ。あまりにも嬉しくて、私は……』
ラウネシアの動揺が大きくなる。先ほどの歓喜の感情ほどではないにしろ、全身を呑み込むような感情だった。
感情の振れ幅が、異常に大きい。
『ああ、カナメ……』
ラウネシアが、再び身体をすり寄せてくる。
それに伴い、甘い香りがした。
甘ったるい香りと、ラウネシアの腕がボクに絡みつく。
食虫植物に捕食された、ハエの姿が脳裡をよぎった。
今のボクはきっと、それと大差がないに違いがないと思った。
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