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樹界の王
22話
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 残されたボクは、父と離婚していた母に引き取られる事になった。母は既に県外に住居を移していて、ボクは予定していた高校とは別の学校に通う事になった。
 唯一尊敬していた父の死はボクに多大な絶望を与え、卒業式を含めたそれらの予定を全て欠席した。暫くは、植物以外の何かとは対話をしたくなかった。由香との関係は、そこで切れた。正式な答えを返す機会は、失われた。
 彼女と再開したのは、新しい高校に入ってから数ヶ月経過した時だった。母を介して電話があり、久しぶりに会わないか、と言われた。彼女の家族を含め、一緒にキャンプに行こうという話になり、ボクたちはそこで再会した。
 束の間の再会だった。ボクたちは二人でキャンプ場を抜け出して、彼女と川沿いを歩いていたはずだったのに、気がつけばこんな森に迷い込んでいた。
 結局、しっかりとした返事を出す事はできなかった。

 それでも、帰還願望はない。
 人間で溢れている人間社会。そこにボクがいたこと自体が間違いだったのだと、今は思う。
 ただ、由香に返事を出す機会が失われてしまったのが、唯一の心残りだった。
 由香への返事が出せなかった事が、罪悪感のようにボクの心の中に堆積し、ラウネシアを無意識に拒否していたのだろうか。
 ラウネシアの強い抱擁を受けながら、ぼんやりと、ボクは彼女との関係について考えを巡らせていた。
『カナメ。貴方は、私を拒絶しますか?』
 ラウネシアの思考が、ボクの思考を押し流す。
 拒絶。
 何故。
 もう、由香はいない。
 ラウネシアは、今まで出会った中で唯一、感応能力を双方向的に利用できる植物体だ。ボクが心のどこかで望み続けていた存在そのもの。
 この森におけるボクの生存に於いて、彼女の存在は必要不可欠なものだ。そして、ボクは彼女の闘争において、それを有利に進めうる知識を保有していた。
 実体のない、漠然とした拒絶を続けるのはもう、止める時期なのだろう。
 ボクは目の前のラウネシアを、そっと抱き返した。
 途端に、ラウネシアの歓喜の感情が周囲に広がった。
『ああ……私を、受け入れてくれるのですね』
 森が、ざわめいた気がした。
 ラウネシアを中心に、森全体に歓喜の色が広がっていく。
 森そのものが一つの生命体のように、一つの感情に支配されていく。
 感応能力がそれら全てを捉え、どこまでも広がる彼女の感情がボクの心を侵略するのではないか、と危惧する程の感情の波。
 その変化に、ボクは恐怖にも似た何かを覚え、身体を小さく震わせた。
 あまりにも巨大な、感情の渦。
 感応能力によって、これだけ巨大な感情を拾い上げるのは初めてだった。
 森全体が、揺れていた。
 感応能力の許容能力を超えたように
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