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無欠の刃
下忍編
弱者
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。カトナの治療もむなしくナルトの腕は治らず、切断された。
 ナルトが目指す「忍」としての道を、自分の所為で絶ってしまったことを、カトナは忘れない、忘れられるわけない。
 
 『カトナの所為じゃないってばよ』

 そう言って笑った彼が、夜に自分の無くした腕を思い出して、泣いていた日があるのも知っている。
 …カトナは結局のところ、ナルトを守れなかった。どんなに守りたくても守れないことがあるのだと、あの日、つきつけられた。
 でも、それは弱いから守りきれなかったのではない。カトナがナルトを守る覚悟をしていなかったから、守りきれなかったのだ。
 その証拠に弱者であった筈の父と母は、九尾から里を守ってみせた。赤子の二人と自らの命を犠牲にし、里を守ろうとする覚悟があったからこそ、彼等は里を守れた。
 …イナリがいう父親だって覚悟がなかったから、ガトーの手から誰も守れなかった。それだけのことだ。

 「私の両親はね、強者に立ち向かい、大切な物を守るために死んでいったんだ」

 淡々としたその語り方は、真実しか語っていないと、幼い彼にさえ分かるようなそんな語り口で、カトナは言う。
 当たり前になってしまった事実を、里を守るために死んでいった二人がいるということを紡ぐ。

 「だからこそ、私は、弱者が何も守れないなんて言葉は、許せない」

 カトナはそういって、青い鞘をイナリの喉元につきつけると、赤い目を見開かせる。

 「次、その口で弱者は強者にかなわないとか言ってみなよ」

 そして、カトナのその小さな口から、感情という感情を混ぜ合わせ、籠めた真っ黒な台詞が辺りに響きわたる。

 「ぶっ殺すよ」

 かたりと、カトナは相変わらずの無表情でそういいきると、ごちそうさまと言って、椅子から立ち上がる。彼女にとっては、それは他愛もない話でしかなかったんだろう。
 彼女にとっては結局、その話は意味がない。目の前の彼にむきになってしまったのは、不覚だったが、自分の両親が弱者だったことも、目の前の子供が弱者だったことも、カトナには関係無かった。
 …関係あるとすれば、カトナにとって、カトナの親はほんとうにどうしようもない、最低の親だったというだけだ。
 …それ以外にはない。

 「…ほんと、最低な親だよね」

 彼がいったカイザのような『父』が羨ましいなと、彼女はそう、誰も居ない場で呟いた。
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