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無欠の刃
下忍編
弱者
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は、ご飯をがつがつと食べる。
 元気だなぁ、とのほほんとした様子でカトナは眺め、そして視界の端で、うーうーと唸る少年を見て首をかしげた。
 そして次の瞬間、イナリが怒鳴る。

 「なんで、そんなに必死になって頑張るんだよ! どうせ、死んじゃうくせに!!」

 涙を流して、サクラにそう怒鳴りつけたイナリを見た周りの面々が、少しばかり視線を宙に迷わせる。
 彼等はつい先日、イナリの祖父であるタズナから、イナリの義父であった『カイザ』の話を聞かされた。
 町の英雄。自慢の父親。ガトーによる公開処刑。
 涙を流して、そう怒鳴るイナリがカイザのことを思いだしていると知り、黙りこんだ一面を一刀両断するように、その声が放たれる。

 「ぎゃあぎゃあ、ぎゃあぎゃあ、うっさい」

 ぱくりと、口に食べ物を詰め込んだカトナは、無造作に、そう言った。
 ぴたりと、その場にいた全員の動きが止まり、カトナの方に振り向くが、もぐもぐとご飯を咀嚼しているカトナにとっては、その視線はどうでもいいものだったらしく、独り言のように、静かな声で呟く。

 「立ち上がれない勇気がない、かっこわるい奴が、努力してる、かっこいいやつを馬鹿にする権利なんて、ないんだよ」

 カトナはそう言って、サクラを見る。
 泥だらけになったサクラは、あまりきれいとは言えない。女の子らしい身だしなみを整えることさえ忘れて、ばてばてになったその姿は、何人かの人間から見れば、『かっこ悪い』だろう。
 ただ一言、カトナの勝手な意見で言わせてもらうならば、その姿は『最高に格好いい姿』だ。
 他人の意見なんか聞かず、自分の意見を押し通し、自分の目標に突き進む彼女は、最高にかっこいい。
 そんな彼女を馬鹿にする権利は、彼にはない。

 「貴方はただ、自分が弱いことを、『自分より強い人が負けたから、自分が勝てなくて問題ない』って言い訳してるだけ」

 厳しい意見。酷評。
 けれど、それが厳しくて痛いのは、カトナが言っていることが嘘がなく、誤魔化しやオブラートに包まれず、情や感傷などといった生ぬるいものに左右されずに容赦なく、自分達が気づいている弱点を指摘するからだ。
 その証拠に反論できなくなったイナリが下を向き、言葉を詰まらせる。彼にだってわかっている、自分が前に進まなければいけないことぐらい、分かる。
 けれど彼は

 「貴方は、逃げてるだけだ」

 恐れてしまって、一歩も踏み出せない。

 言い切ったカトナに、イナリは怒鳴り付ける。
 自分の弱さを認めきれず、かといって、自分が強いと騙ることもできない。
 …弱い彼。

「うっさい!! この国の事、なんにもしらないくせに!!」
「それは貴方のおじいさんに言って。私たちは確かに何も知らないけれど、君
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