下忍編
弱者
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は、ご飯をがつがつと食べる。
元気だなぁ、とのほほんとした様子でカトナは眺め、そして視界の端で、うーうーと唸る少年を見て首をかしげた。
そして次の瞬間、イナリが怒鳴る。
「なんで、そんなに必死になって頑張るんだよ! どうせ、死んじゃうくせに!!」
涙を流して、サクラにそう怒鳴りつけたイナリを見た周りの面々が、少しばかり視線を宙に迷わせる。
彼等はつい先日、イナリの祖父であるタズナから、イナリの義父であった『カイザ』の話を聞かされた。
町の英雄。自慢の父親。ガトーによる公開処刑。
涙を流して、そう怒鳴るイナリがカイザのことを思いだしていると知り、黙りこんだ一面を一刀両断するように、その声が放たれる。
「ぎゃあぎゃあ、ぎゃあぎゃあ、うっさい」
ぱくりと、口に食べ物を詰め込んだカトナは、無造作に、そう言った。
ぴたりと、その場にいた全員の動きが止まり、カトナの方に振り向くが、もぐもぐとご飯を咀嚼しているカトナにとっては、その視線はどうでもいいものだったらしく、独り言のように、静かな声で呟く。
「立ち上がれない勇気がない、かっこわるい奴が、努力してる、かっこいいやつを馬鹿にする権利なんて、ないんだよ」
カトナはそう言って、サクラを見る。
泥だらけになったサクラは、あまりきれいとは言えない。女の子らしい身だしなみを整えることさえ忘れて、ばてばてになったその姿は、何人かの人間から見れば、『かっこ悪い』だろう。
ただ一言、カトナの勝手な意見で言わせてもらうならば、その姿は『最高に格好いい姿』だ。
他人の意見なんか聞かず、自分の意見を押し通し、自分の目標に突き進む彼女は、最高にかっこいい。
そんな彼女を馬鹿にする権利は、彼にはない。
「貴方はただ、自分が弱いことを、『自分より強い人が負けたから、自分が勝てなくて問題ない』って言い訳してるだけ」
厳しい意見。酷評。
けれど、それが厳しくて痛いのは、カトナが言っていることが嘘がなく、誤魔化しやオブラートに包まれず、情や感傷などといった生ぬるいものに左右されずに容赦なく、自分達が気づいている弱点を指摘するからだ。
その証拠に反論できなくなったイナリが下を向き、言葉を詰まらせる。彼にだってわかっている、自分が前に進まなければいけないことぐらい、分かる。
けれど彼は
「貴方は、逃げてるだけだ」
恐れてしまって、一歩も踏み出せない。
言い切ったカトナに、イナリは怒鳴り付ける。
自分の弱さを認めきれず、かといって、自分が強いと騙ることもできない。
…弱い彼。
「うっさい!! この国の事、なんにもしらないくせに!!」
「それは貴方のおじいさんに言って。私たちは確かに何も知らないけれど、君
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ