第五章
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第五章
そっとだ。こう球場のスタッフに尋ねたのである。
「あの、宜しいでしょうか」
「神父様ですか」
「はい、宜しいでしょうか」
何気にだ。神父という立場がいい状況を生み出していた。欧州全体でそうだがとりわけカトリックのお膝元であるイタリアでは神父それ自体への敬意が深い。それでなのだった。
球場のスタッフもだ。彼に敬意を払って応えるのだった。
「ヘルナンデス選手にですが」
「差し入れでしょうか」
「贈り物をしたいのです」
そちらだというのである。
「そうしたいのですが」
「贈り物。ああ、それですね」
「はい、この花束をです」
白薔薇のだ。今手に持っているそれを見せての言葉だった。
「お贈りしたいのですが」
「わかりました」
普通なら断られるであろう。しかしだった。
スタッフは神父の言葉に笑顔で頷いてだ。こう彼に言うのだった。
「神父様でしたら」
「すいません」
「何、神父様の申し出を断ることはありませんよ」
その神に仕えているということがだ。神父には幸いした。
こうしてだった。彼はだ。
ヘルナンデスの前まで案内された。そうしてだった。
丁度着替えている彼の前に来てだ。まずはこう言うのだった。
「今日のプレイですが」
「楽しんでもらったかな」
「はい、とても」
こうだ。熱い声で彼に応えたのである。
「そうさせてもらいました」
「それは有り難いね。神父様にそう言ってもらえるなんて」
「私にですか」
その言葉にだ。神父は熱いものを感じた。
心が上気していくのがわかる。そのうえでだ。
彼にだ。さらに言うのであった。
「それは何よりです」
「うん。明日も活躍するからさ」
「そうですか。それは何よりです」
神父も喜ぶ言葉だった。そしてだ。
ここでだ。その手にしている花束をだ。彼に差し出し。
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