第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
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───
『そう、片方のみ。未来か、過去か……進む方を、繋ぐ方を、選択しなければ』
どうやら、この粘塊は『話しかけられた方へ』としか反応を返していない事に気付く。
「そうだわ、こうじ。前の約束……また来てくれるって約束。守ってくれて、ありがとう」
「そうだよ、コウジ。前の約束……もう来ないって約束。破っちゃうなんて、酷いよ」
「ハハ……何て言うか、参ったな」
と、そこで二者二様、二律背反。先程までのように同じ事を言ってくれれば、楽なのだが。
「それに、あの娘。お花畑の娘。ちゃんと助けられて、よかったわ。やっぱり、こうじって強いのね」
「それに、あの娘。双房髪の娘。ちゃんと助けられて、よかったよ。まったく、コウジって弱いよね」
『だから、選べ。たった一つのその右手、掴み取れるものも、また一つ。簡単な計算式だ、“悲劇と言う名の喜劇”だ。そうだろう?』
褒める黄金に、貶す純銀。嘲笑う、無色透明。全く以て、調律した矛盾そのもの。
「ご期待に応えられる結果が出せたら、良かったんだけどな」
「ええ、素敵だわ、こうじ」
「ああ、不様だね、コウジ」
──だからこそ、俺は『繋ぐ』。『寂しい』と、かつて呟いたこの二人の為。
「だからさ、いつか……“外に行こう”。見るだけじゃなくて、自分自身で、歩いてみないか?」
「“外”……わたし自身?」
「“外”……ワタシ自身?」
──少しでも、寂しさを紛らわそうとしているこの二人の為に。多少の思考の手間など、何するものか。
「うん……じゃあ、約束よ、こうじ」
「ウン……じゃあ、約束だ、コウジ」
『────やれやれ……』
肩を竦める気配と共に、少女達が表情を変える。驚きから、喜びへと。差し出された、『重なる二つの右手』に、小指を絡めて。
しかし、時間切れだ。もう、もう────
「ああ────それなら、また来るよ。今度こそ、『君達の物語』を」
半ば、意地で。黒に染まる意識に、大好きな群青菫を思い描いて。
「繋ぎ、に────」
閉ざされる。あの戸口は、もう開かない。その時までは、絶対に。
笑っている。声もなく、姿もなく。音もなく、光もなく、混沌のただ中で。もう、届く筈もない。もう、もう────
「だから、俺は────」
右手。人のままの。温もりと冷たさ、その二つが残った右手を────
『今晩は。忌々しくも素晴らしき、我が聖餐よ』
掴み、掠れた声で呼び、目の前で狂い笑う黒い──全身鎧。闇に彷徨う深紅の三つ目、和の物とも洋の物ともつかない甲冑に、龍の如き翅の造化の神弑し。其は、神仏の敵たる『第六魔王』。
それに付き従い
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