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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――2
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 ゴルロイス……エレインが遺した希望――救済組織サンクチュアリは、世界の終わりを生き延び、滅んだ世界でなお、希望の光として存在しつづけていた。彼女達がいなければ、あるいは世界は……人間はすでに存在していなかったのかもしれない。エレインの生きた痕跡は、滅んだ世界の中でなお希望となって輝いていた。それは、揺るぎない事実だった。彼女の遺志を受け継いだ者達は今もなお滅び続ける世界の中で、少しでも多くの命を救うべく足掻き続け――その結果として、人間は今も生き伸び続けている。
 まさか魔法使いが血塗れた必要悪の代行者ではなく、万人に希望を託される救済者になるとは……恩師達の生きた世界では誰も夢にも思わなかっただろう。
 魔法使いは今や生き残った全ての人間の希望である。
 その筆頭にいるのが、目の前の少女――二一代目ゴルロイス、エレイン・カムランという事になるだろう。だが、彼女達とて人間である。必然的に、そして絶対的に。彼女達の力には自ずと限界があった。事実、サンクチュアリは目の前に迫る『終わり』に抗う事に精一杯だったと言わざるを得まい。世界の救済という大義の元に『マーリン』の討伐は過去に何度か計画されたそうだが……結果は今さら言うまでも無い。何人もの優秀な魔法使い達を失い、そのうち実行するだけの人員もいなくなった。討伐作戦以外にも『マーリン』の襲来や、彼の下僕である魔法生物、あるいは魔物の襲撃によってサンクチュアリの構成員――世界の終わりを生き延びた魔法使い達はその数を少しずつ減らしていた。アヴァロンやグリムの残党のいくらかと合流する事もあったそうだが、それでも失われていく数を補うには足りない。また、思想の違いから再び別れる場合もあったという。ただ、それは仲違いによる決裂とは異なったらしい。それぞれがそれぞれの生き様を残すために。その為の別れだったと、彼女は言った。
 世界が終わるからこそ、どう生きてどう死ぬかが問われるのだ――とは、二代目ゴルロイスの言葉だそうだが……アヴァロンやグリムの魔法使い達もそれぞれ己の生き様を世界に残していったのだろう。サンクチュアリとは接点のない魔法使いの集団が、今も各地に僅かばかり残っているという。
 世界を復興させるには、その集団と協力関係を結ぶ必要がある。だが、今のサンクチュアリにはそれほど広域に人員を派遣するだけの余力がなかった。
 となれば、動けるのは自分しかないようだ。提案すると、こちらの『右腕』を見やり少し躊躇ってから……結局、彼女は受け入れた。
 確かにこの『右腕』が誰かに見られるのは都合が悪いが、逆に言えばそれだけ隠し通せれば問題はない。それに元々サンクチュアリの戦力に数えられていない存在であり、魔物が闊歩するこの世界を渡り歩ける程度の腕がある。そんな都合のいい戦力は、そうそう転がっている訳ではない
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