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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■SAO編 主人公:マルバ■■
壊れゆく世界◆最終決戦
第四十二話 決戦と代償
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 ボス部屋が僕達を睨みつけている……マルバは恐怖を感じて身震いした。ついひと月前、強大な力で何人もの仲間を薙ぎ払った、あの敵と再び戦う日が来たのだ。いつにもましてピリピリした空気の中、マルバは無意識に拳を固く握りしめた。
 その拳に触れるものがあった。その感覚だけで、マルバの震えは不思議と収まった。いつも隣にいて支えてくれた、マルバにとっていちばん大切な存在……。マルバは握りしめた拳を緩めると、その小さな手を包み込んだ。ぎゅっと握られる感覚がした。マルバもただ握り返した。それで十分だった。マルバは自分の心のなかに、小さくも純粋で、暖かな炎が燃え上がるのを感じた。
 あたりをゆっくりと見渡すと、今まで共に死闘を繰り返してきた仲間がたくさんいた。みな戦う理由はそれぞれだが、彼らの理由は等しく強く、自らの命が犠牲になることさえ覚悟していた。マルバはひとり頷き、この死闘の先に、帰るべき世界があることを信じた。

「諸君――」
 僅かにかすれた声が、石造りの広場に反響した。あたりの緊張が更に高まり、マルバはその空気に触れれば怪我をするのではないかという錯覚を覚えた。その場にいる全てのプレイヤーは、間違いなく死人が出るであろう戦いにそれでも身を投じる覚悟を、無言のうちに確認しあった。ヒースクリフは一旦言葉を切り、僅かに言葉を溜めて、力強く宣言した。
「ついにこの時がやってきた。もはや私が言うことは何もない。この戦いに向けて君たちが固めた覚悟を代弁できるほど、私の言葉は力を持たないからだ。さあ、解放の日の為に……生きてこの部屋を出られることを願って」
 彼は無表情にそれだけ言い放つと、こちらに背を向け、扉に手をかけた。扉が軋みながら開いてゆく。部屋の中の漆黒の闇に向かって、彼は十字剣を振り下ろした。
「……行くぞおッ!」
 それぞれの思いを心に秘めた戦士たちの鬨の声が、部屋の闇を吹き飛ばす勢いで轟いた。


「全員、散開ッ! 敵は天井から来ます、索敵スキルを持つ者は敵の落下位置を――」
「来ますッ!」
 アスナの指示に被さるようにして、誰かの叫び声が響いた。その声から遠ざかるようにして戦士たちが退避すると、円状に人のいない地帯ができあがる。落下してきたボスは丁度その中央に降り立ち、恐ろしい輝きを放つ鎌を振り上げた。ボスの名称とHPバーが現れるが、しかしその表示をのんきに眺める者は一人もいなかった。振り上げられた鎌が唸りを上げてこちらに襲い掛かってくる……!
「ミズキ!」
「……なめんじゃねぇッ!」
 最初の鎌が狙ったのはマルバたちだった。ミズキが盾を振り上げ、鎌に側面から殴りかかった。ミズキが地面に突き刺さる鎌を押さえつけると、その背後から最初の一撃をかますプレイヤーが……
「はああッ!」
 掛け声とともに一歩踏み出し、その額に見事な
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