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SAO─戦士達の物語
GGO編
八十五話 今だけなら
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。左にはキッチンだ。
奥へ進むと、そこに一部屋。右の壁に沿ってパイプベットと、ライディングデスク。左の棚には木製の小さな本棚とクローゼット。それに姿見。

「わぁ……良い部屋だねぇ」
美幸が嬉しそうにそう言うのを見て、詩乃は苦笑する。

「そ、そうかな?狭いし、洒落っ気も無いしで、あんまり女の子っぽくないかな……なんて」
「そんなことないよ。ちゃんと整頓されてるし、部屋が綺麗なのはその人の心も綺麗な証拠だって、おばあちゃんが言ってたじゃない」
微笑んで言う美幸をみて、何となく照れてしまう。
と、後ろからすねたような声が聞こえた。

「俺には皮肉にしか聞こえなかったけどなっと。ふぅ……これ、全部ぶち込んでいいのか?」
運んでいた買い物を廊下にどさりと下し、涼人は問う。

「あ、春雨は置いておいてくれるかな?って……それはりょうがちゃんと整理出来なかったのが悪いんだよ。ゲーム機とか出しっぱなしにするし」
「へいへいおっしゃる通り」
口をとがらせて言った涼人を見て、美幸は困ったように「ねぇ?」と言う。
確かに、幼少の頃の涼人は整理整頓がお世辞にも得意では無かったと言える。使ったゲームは出しっぱなし。何か飲んだらコップは流しにいれずにそのまま。食器の片付けも言われないと忘れるし、基本的に道具を元の場所に戻さない子供だった。
今はどうか知らないが、少なくともそのころを知っている詩乃としては、微笑みながら「確かにね」と言って頷いたのは当然だろう。

「さて……あ、りょう兄ちゃん」
「ん〜?」
詩乃の方を見ずに作業を続ける涼人に、詩乃は言う。

「入れるのがひと段落したら、一回トイレの方に行ってて」
「あん?何だよ。女性陣で秘密の話でもすんの?」
「そうじゃなくて……」
詩乃の方を向いて問うた涼人に詩乃は内心「なんで言わせるかな……」と思いつつも呟くように小さな声で言った。

「……着替えるから」
「あ、さいで」
涼人が美幸に少々説教を喰らったのは、また別の話。

────

「出来たよ〜」
「おーう。腹減ったな」
「りょう、お皿出してくれる?」
「あいよ」
「あ、良いよ。私やる」
美幸は詩乃に気を使ってか皿出しを涼人に頼んだが、あえて詩乃は自分から動いて逸れを遮る。
自分の部屋とは言え、食事を作って貰って他の事までしてもらうのは気が引ける……親しき仲にも礼儀あり、だ。

「ん?あー、んじゃたのまぁ」
「うん」
立ち上がり、詩乃はキッチン脇の小さな食器棚に近寄ると、美幸の言う大きさの皿をテキパキと取り出す。料理が並んだ皿は涼人が運ぶ。

と、詩乃はふと茶碗に手を伸ばして、あることに気付いた。

「…………」
普段は洗い籠から直接取るために開かない棚の
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