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SAO─戦士達の物語
GGO編
八十五話 今だけなら
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待を抱きつつ、詩乃は恭二と共に歩きだした。

────

「……へへ」
「?どうしたの?りょう」
アーケードの方へと歩きつつ、突然笑ったりょうに、美幸が首をかしげる。

「ん?いや、詩乃の奴元気そうだったからな。なんだかんだ。ほっとした」
「……うん。本当、良かった。あ、でもさっき……」
「あぁ。カツアゲ喰らってたな……まぁ、後でちゃんと話すさ。っても彼奴ガキの頃からしっかりしてたし、いざとなりゃ自分でもなんとかすっと思うがな」
「でも……」
「ちゃんと話すっての。心配のし過ぎは毒だって、これ前にも言った気がすんだがな?」
「うん……」
少しだけ不安そうに、美幸は俯く。と言うのも彼女もまた、地方から東京に出てきたばかりの頃は、色々な不安やなじめ無さが有ったものだ。
特に、彼女は内気な事も会って色々あった。その時は……

「…………」
「?どした?」
少しだけ俯いて押し黙るような気配を見せた美幸に、涼人が声をかける。
その声が何時もより幾らか心配そうな気配を帯びていたことは、彼と長い間付き合っていないと分からないだろう。

「え?あ、ううん。何でも無い!」
「……そうか」
そう言うと、涼人は再び前を向く。と、ふと思い出したように呟いた。

「そういやぁ、新川って奴さぁ……」
「うん?しーちゃんの友達だよね?」
「ん。まぁそりゃそうなんだけどよ、彼奴多分詩乃に惚れてんじゃねぇ課と思うんだが……」
「あ、それ、私も思った」
美幸が手をポンッと合わせて言う。その顔はどこか嬉しそうだ。

「りょうの事、ちょっと睨んでたよね」
「ん。警戒心丸出しだったな。ありゃ、結構本気で狙ってるかもな」
ははっ。と笑いながら涼人は路地裏を出る。少し小走りで付いてきた美幸が続けた。

「もしそうなら……良い人だと良いね」
「悪い奴には見えなかったがな。ちっと警戒し過ぎ感はあったが……ま、問題ねぇだろ。もしろくでもねぇ奴ならぶっ飛ばすし」
「だ、駄目だよ!殴ったりしたら。此処は向こうじゃないんだし捕まっちゃうよ?」
「言葉の綾だっての。んなマジで殴ったりしねぇよ、あいつがPKじゃねぇ事くれェは分かってるつもりだ」
そう言って笑った涼人に、美幸は溜息をつきながら続くのだった。

────

染み込んだ雨水によって薄く色のついた階段を、詩乃、美幸、涼人の順で登る。普段は無機質なそれだけ動作をするにも、少し心が浮ついて居る。

「じゃあ、入ってどうぞ?」
「はい。お邪魔します」
「おっじゃま〜」
久方ぶりに、詩乃の部屋に彼女以外の人間の声が響いた。以前ならば少しでも嫌悪感を感じただろうそれも、今は胸の奥が温かくなるそれだ。

入ると、三メートルほどの長さで廊下が続く。右にはユニットバスとトイレ
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