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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第九話 苗川攻防戦 其の一
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束される事になる」

「しかしそれでも二個大隊も動かせません。
確かに偵察部隊は600名前後だと報告していましたが、とても信じられません――危険すぎます」

シュヴェーリンは瞑目し、自分が戦場の現実を知った時に――自分の居た中隊で“行方不明”となった中隊長の決まり文句――戦塵を戦列の正面で浴びていたシュヴェーリン中尉が唾棄した無能者の証明たる言葉――を発した。
「これは命令なのだ――大佐」

「はい、閣下。しかし小官が反対した事は、」
「分かっている。文章にもしておいてやる。日が暮れるまでまだ一・二刻あるそれまでに出発せよ」
 シュヴェーリンはカミンスキィに背を向け、彼が出ていくまで振り返らなかった。

            書状
発 第三東方辺境領胸装甲騎兵連隊本部
宛 先遣隊司令部
持ち出せる糧秣は一個大隊を賄うことも困難と判明。
試算した結果、渡河した時点で消耗しつくすと予想される。
午後第四刻に東方辺境領胸甲騎兵連隊第一大隊を
連隊本部が直率し出発す。


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