■■SAO編 主人公:マルバ■■
壊れゆく世界◆断章
第四十一話 別れの運命
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「そんな……そんなのって……」
「辛いだろうが、これが真実だ」
ギルドホーム一階のリビングルームで、ミズキはマルバたちが居ない隙を見計らって、アイリアに『大事な話』を持ちかけた。アイリアはミズキの怪我について、或いは怪我に起因する記憶障害についての話だと思い、覚悟を決めた上で話を聞き始めたのだが……アイリアのその予想は方向においては正しく、重大さにおいて大いに間違っていた。
「俺はお前とは居られない……。別れよう。それがお前のためだ」
ミズキの言葉に、アイリアは顔を上げてミズキを睨んだ。
「私は、ミズキと最後の一瞬まで一緒に居たいんだよ? もし私のためを思うのなら、最後まで一緒にいて」
「辛い思いが増えるだけだ。俺と一緒にいて、無駄に辛い思いをする必要なんてない。悪いことは言わねぇ、やめろ」
「私がミズキと一緒に居なかったことへの後悔を抱えて生きるのと、ミズキと一緒にいたっていう記憶を抱えて生きるのと、どっちが辛いかなんて私が決めることでしょ! 私がミズキと一緒にいることを選ぶって言ってるんだから、ミズキはそれを受け入れてよ!」
「……それなら、誓え! 俺と別れた後、俺のことは単なる思い出として胸にしまい、さっさと先へ進むことを。少しでも立ち止まったら駄目だ。もし誓えないなら……俺は今すぐここを出て行く」
二人はしばらく睨み合った。長い時間が過ぎ、アイリアはついに俯いて呟いた。
「……わかった、誓う」
だから今は……そう呟くと、アイリアはミズキの身体を抱きしめた。今はただ、ミズキの存在をしっかりと感じたかった。
「……俺も、ずっとお前と一緒に居たかった」
ミズキの涙が、アイリアの身体に落ちた。二人はただ抱き合い、この瞬間の記憶を深く、できるだけ深く胸に刻み込んだ。
ミズキは『記憶』の本を使わなかった。それは、ミズキが今日のこの記憶を忘れることはないということを意味する。――そのことに気づいたアイリアは言いようもないほどの悲しみに打たれ、ミズキの身体を更に強く抱きしめた。
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