第1章 双子の兄妹
1-3 初めての感覚
初めての感覚
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兄の逞しい姿を改めて上から下まで眺めてみた。胸が熱くなり始めた。
「一昨日さ、一緒にお茶飲んだ時、あたしここにハンカチ忘れていかなかったっけ?」
マユミはその日の夜中見てしまったケンジの姿を思い出して、少し顔を赤らめた。
「ああ、あったあった。これだろ?」
ケンジが引き出しから取り出したそれはきれいにたたまれていた。
「洗濯してアイロンも掛けといたから。ありがたく思え」
「え? そんなに汚れてた?」マユミは兄の反応を窺った。
「そ、そういうわけじゃないけど、それがエチケットってもんだろ?」
マユミはますます胸が熱くなった。
「意外と紳士なんだね、ケン兄」
「気づくのが遅いね」
「そうそう、それから、」マユミはちょっとだけ間を置いて続けた。「あたしの学校の体育祭でダンスの時黒のTシャツ着なきゃいけないんだけど、ケン兄持ってる?」
「黒のTシャツ? あるけど。サイズが合わないんじゃ?」
「いいの、多少大きい方がお洒落だし」
ケンジはクローゼットの中に入って行った。「マユ、何枚かあるけど、どれがいい?」
「え? 何でもいいけど……」
「お、おまえもちょっと来いよ」狭いクローゼットの中からケンジが躊躇いがちに言った。マユミは少し戸惑いながらも、その薄暗い空間の中に入っていった。
「これと、これ。こっちにもあるけど」ケンジは3枚のTシャツを手にとってマユミに見せた。
「汚れるかも知れないから、一番着古したのでいい」
「じゃあ、これだな」ケンジは一枚を手に残して、後の二枚は引き出しにしまった。「う、後ろ向けよ」
「え……う、うん」
マユミは少し赤くなりながらケンジに背を向けた。ケンジは手に持ったTシャツを広げ、背中からマユミの肩に合わせてみた。「ちょ、ちょっと大きいかな」そして彼女の背中にそっと押し付けた。
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ケンジの指が自分の肩や背中に触れる度にマユミの鼓動は速くなっていった。その事を悟られまいとマユミは慌てて言った。「だ、大丈夫だよ。これで」そしてクローゼットを出た。
「じゃ、じゃあ、借りるね。終わったらちゃんと洗って返すから」
「そのままでもいいぞ」
「え?」
「い、いや、洗濯するの、面倒だろ?」
「エチケットだから……」マユミは少しうつむいてそう言った後、ケンジの部屋を出た。
ケンジは、たった今、間近で感じた妹の体温の余韻を味わっていた。自分の指で触れた彼女の肩の柔らかさや背中の温もりを、閉められたドアの前に佇んだまま反芻していた。彼の鼓動は図らずも速くなっていった。
部屋に戻ったマユミは、たった今ケンジから借りたTシャツを着てみる事にした。上着を脱いでブラジャーを外した。露わになった上半身に、兄の着古されて、少し白く毛羽立った黒いT
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