下忍編
必要不可欠
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「再不斬さんと白さん、遅いな」
ぽつりとそういうと、少年は寝かせられていたベットから起き上がり、外を覗く。
いつもの彼等なら、すぐにでも相手を始末し、今頃ここに帰ってきているはずだ。なのに、遅い。
もしかしたら、相手が情報以上の強敵だったか、多数だったのか。心配になった少年が窓の外を見る。
「僕も、向かった方がいいかもしれない」
そう言って少年が部屋から飛び出ようとした瞬間、彼の口から血がこぼれる。ごほっごほっとせきこみ、その場に倒れ込んだ少年がそれでも立ち上がり、床を這いつつ、扉を開ける。
立ち込めていた霧が、彼等と彼が出会ったあの日を思い出させて、少しだけ懐かしくなる。
彼等に襲いかかった少年は、その時、白に手をさしのべられた。
『君は…再不斬さんに会う前の僕と、同じ目をしていますね。いきる意味が分からないなら、再不斬さんの道具に、なってみませんか?』
『…へぇ、その血継限界、ずいぶんといいな。おい、お前、俺の道具になれ。そうしたら、新しい世界を見せてやるよ』
再不斬が少しばかり機嫌を良さそうにして、話し掛けてくれたことだって、思い出せる。
その時、彼はいきる意味を得た。忘れがたき、彼が生まれた日だった。
「再不斬さん、白、さん」
自分の大切な人たち。失いたくない二人。白さんは自分と同じで、再不斬さんにとっては道具でしかない。けれどいいのだ。彼の為になるというのならば、自分たちは道具でいい。自分たちは彼に使い潰されてもいい。
彼らにとって、再不斬はそれに値する人だった。
再不斬こそが、彼らにとって生きる意味だ。もし、再不斬が彼等をいらないと判断したのならば、彼らは再不斬の役にたてなかったことを悔やんで死ぬのだろう、逆に再不斬の役にたって死んだのなら、彼等は死さえも受け入れ、喜びながら死んでいくのだろう。
ああ、なのに、僕は彼の役にたてなくなってしまう。
真っ赤になった手のひらを睨み付け、少年は内心で自分を罵ったが、胸の奥から溢れる血は止まらない。
経絡系が傷付いているらしく、忍者としての生命は絶望的になっていく。再不斬の道具でいられなくなってしまう、白の同士でいられなくなってしまう。自分は、彼らの一部でいられなくなってしまう。
嫌だ嫌だと頭を振りつつ、少年は小さくその場にうずくまった。
……
あの人の、声がする。
大丈夫だよ、……は傷つけさせないから。
ジージーとその瞬間、ノイズがかかったように音が聞こえず、映像も乱れた。なんと呼んだかが聞こえなくて、耳をもう一度すませたが、彼女は押し黙ってしまって、何も言わない。
彼女の額からはいくすじも血が流れていて、彼女の口の端からは、赤色がこぼれていて。いくつもの傷痕がし
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