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ゾンビの世界は意外に余裕だった
5話、プライド
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住所と電話番号をメモしたあと、所長の奥さんのゾンビ体験談を十分ばかり聞いた。

「確か斉藤さんでしたわね。無事をお祈りします」
「ありがとうございます。私も所長のご家族の無事をお祈りします」

 やなり山田所長は行方不明らしい。もちろん、あちこちでゾンビと交戦が続いている以上、自宅への道が閉ざされているだけなのかもしれない。
 とにかく山田所長の奥様からの生の情報は役立つ。奥様によると研究所に近い複数の町は、大通りをゾンビに征服されてしまったようだ。さらに武装した人間の無法集団が略奪を始めていて、山田所長の奥様のご家族は対抗する自警団に守られているそうだ。

 とはいえ、今のところ俺に出来ることはアンドロイドを稼働させていくことぐらいだ。

 再びB棟に向かう前に大名行列になりつつ俺の護衛を再編することにした。現在、キャリー、レイア、レグロン、マイルズ、レムルス、ロムス、S3戦闘アンドロイド十四体が俺を囲んでいる。明らかに過剰警備だ。

「S3は当面本館ロビーで待機せよ」 

 これで護衛は六体に減ってすっきりした。

 さて、次はB棟最上階を占有している研究室に行くことにした。最高学府の教授や自衛軍士官学校の指導者など、そうそうたるメンバーで構成されている。ここでは、指揮型と呼ばれる戦闘指揮アンドロイドを開発しているのだが、実際には他にも色々と開発している。

 ちなみにレグロンやマイルズも指揮は出来るのだが、この研究室から俺に声がかかったことはない。

「それにしても、こいつがレグロンの五倍の資金で開発されたアンドロイドか」

 カール大佐と名付けられた黒い軍服を着た片腕のアンドロイドを見て、俺は思わずレグロンを見た。通信機能や情報処理機能以外、そんなにレグロンとスペックは変わらないのだが、俺が予算超過で諦めた素材をふんだんに使ってやがる。

 ちなみにカール大佐の片腕は未完成で遠く離れた部品工場にある。それともう一体、カール大佐の改良型があるがこちらは完成率五十パーセントで稼働しない。

 俺はカール大佐を稼働させる準備を始めた。教授先生どもは妙に複雑なシステムを組んでいて、プログラムを修正してする起動までにかなりの時間を要した。

「閣下ご命令を」
「私のことはボスと呼べ」

「閣下としか呼べません」

 教授どもめ! 複雑なプログラムにしやがって。

「今は潜入任務中だ。ボスと呼んでくれ」

「分かりますた。ボス」

 ふっ。チョロいな。しょせん教授どもは温室育ちだ。

「カール。腕がないようだが戦闘可能なのか」
「戦闘能力は70%です。少佐シリーズ及び四等兵シリーズがあれば、カバーできます」

 四等兵シリーズと呼ばれる低スペック戦闘アンドロイド達は、レグロンを少しひ弱にした体型の黒髪黒目のアンドロイドだった。S3型より僅かに性能を上回るだけの安
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