おまけ:いざゆかん妖精の世界
[3/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
色んなところで歌ってたし」
「歌・・・って、歌っただけ!?他には!?」
「や、本当に歌以外何も出来ない奴でさ・・・しかもその歌も、最初の頃はそこそこ止まりだったらしいし」
彼女は周囲のSAOプレイヤーが皆凄腕だから忘れがちだったが、ゲームオーバー=超即死の世界で敵と戦う勇気が出ずにずっと町に籠っていた人間だっているのだ。全員が全員強い訳ではない。
でも、ならば何故彼はここまで慕われているのか?
今日の集まりの中には「久しぶりにあの人の歌が聞ける」と喜んでいる人や、今までMMORPGを離れていた人まで態々新規でやってきていた。そんな人たちの噂を聞いてさらに人は集まり、この場には60人近いプレイヤーが集結している。
「アイドルみたいな人じゃないの?」
「いや全然。何所にでもいそうな人。でも・・・・・・あの人はデスゲーム開始初日から終了日まで、毎日欠かさずアインクラッドの町で楽器を鳴らして歌い続けてた」
約2年間だ。
2年の間、それ以外何もなすことが出来ずにただ歌い続けていた。
来る日も来る日も弦楽器を弾いて覚えている歌を思い出しながら演奏し続ける。
武器があっても戦えない。
職人にもなれない。
商売するだけの伝手もない。
そんな状態の頃からずっと、誰に言われるでもなく歌い続ける。
それは不安に身を焦がされてやれることもない彼が自分を鼓舞する思いもあったのだろうが、同時にその歌は他人の心も動かしていた。
「SAOはそれ自体がゲームだから、中に娯楽なんかない。あいつのストリートライブはそんな中でも唯一、金も手間も掛けずに時間が潰せるものだった」
「特に下層で戦えずに籠っている人は、あの人の歌を口ずさんで心の餓えを凌いでいるのも少なくなかった・・・恥ずかしながら、俺も昔はそうだったんですが」
「中層でも人気だったぜ。何せ攻略組も聞きに来るんだから皆物珍しがってな。本人はそれを嫌がってかちまちま演奏する場所を変えてたけど」
「上層も、戦いもせずに歌ってるなんて文句を言う奴は殆どいなかったな。最古参の攻略プレイやーや著名なプレイヤーにファンが多くてさ」
「うんうん、あいつの歌には何度も励まされたぜ」
「ニャハハ。アイツの演奏した歌の録音結晶、結構な儲けになったヨ!」
「あー・・・みんな携帯プレーヤー感覚で持ってたな」
「アタシなんか頑張って全曲揃えたもんねー!」
「マジで!?」
質問した彼女を置いてけぼりにして勝手に盛り上がる周囲。
それを見て、彼女は「ああ、本当に慕われてたんだ」と思った。
他人を気に掛けるほど余裕のある世界じゃなかったであろうSAOで、彼らはその人に無条件の好意を寄せていた。
と、そこに2人のプレイヤーがやってきた。片方の女性は道案内だったらしく、もう片方の男性をステージへと誘
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ