第二十一話 菖蒲の友人その四
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「もうね」
「ええ、三十いっててね」
「結婚してもおかしくない年齢だったわね」
「そう、というかね」
ここでクラスメイトはこう菖蒲に言った。
「三十代になるとね」
「女の人は」
「私達にしてもね」
自分達のことも頭に入れての言葉だった。
「結婚をね」
「考えていくわね」
「そう、だからね」
「あの人もなのね」
「考えていたと思うわ」
こう菖蒲に言うのだった。
「それも必死にね」
「必死なのね」
「うちの叔母さんが言ってたけれど」
ここでクラスメイトは自分の親戚の話も出した。
「三十五歳で結婚したんだけれど」
「その人はどうだったのかしら」
「もう三十近くなったらね」
その頃になると、というのだ。
「焦りだすらしいのよ、本気で」
「結婚しようと」
「それで三十を超えたらね」
そうなれば、というのだ。所謂三十路になると。
「もう必死になって」
「結婚しようとなるのね」
「そうらしいわ、それで三十五で結婚したんだけれど」
「よかったわね」
「よかったも最高よ」
そう言っていい位だったというのだ。
「もう子供も出来てほっとしてるわよ」
「三十五歳で独身っていうけれど」
「アラサーとかね」
「そうした言葉は現実なのね」
「そうみたいね、最近結婚しない主義の人も増えているけれど」
このことは男女共だ。どうもこうしたことについては淡白な社会になってきているのだろうか。将来への不安も大きく。
「それでもね」
「出来ない人もいるのね」
「うちの叔母さんはね」
「どっちだったの?」
「したかったの」
そうだったというのだ、彼女の叔母さんは。
「長い間付き合ってた人のね」
「その人が中々決断しなかったのね」
何故結婚出来なかったのか、菖蒲はすぐにその辺りの事情を頭の中で考えてそのうえでクラスメイトに答えた。
「だからね」
「そうなの、その人車のパン屋さんだけれど」
よくある商売の一つではある。
「将来が不安で」
「だからなのね」
「交際して十年の間ね」
「結婚を決断しなかったのね」
「将来どうなるかわからないって」
「それは大変だったわね」
クラスメイトの叔母さんである、この場合の大変の対象は。
「それはまた」
「そうね、けれど叔母さんがもう必死に説得してね」
「それでなの」
「そう、何とか結婚にこぎつけて五年」
既にそれだけの歳月が流れているというのだ、結婚して。
「今じゃ夫婦二人で仲良くパン屋さんやってるわ」
「それはいいことね」
「それで叔母さんいつも言うのよ」
にこにことしてだ、クラスメイトは菖蒲に言う。
「人間結婚しないと駄目って」
「そう言うのね」
「そうなの、一人より二人ってね」
「交際していても」
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