第五章
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第五章
第五章 ハーレムを捨てる
彼はだ。決断した。そしてジャアファルにその決断を述べた。
「捨てるよ」
「そうされますか」
「うん、確かに惜しいけれど」
それでもだというのだ。
「このままじゃもたないよ」
「わかりました。それでは」
「じゃあそういうことでね」
「彼女達には充分な手当てをして」
イスラムでは離婚は相手に離縁すると三回言えばそれで足りる。しかしそれと共にその相手が一生困らないだけの手当てをしなければならない。ムハンマドは実は女性のこともかなり大切にしていたのである。当時の観点から言えばかなりのフェミニストだったのだ。
「そうされますね」
「幸いまだ子供はいないしね」
「はい、それでは」
こうしてだ。ハーレムの美女達全員に暇を出したのであった。
そしてそれからだ。あらためてだった。ジャアファルが彼に話してきた。
「それでなのですが」
「それで?」
「あらためて結婚されますか?」
主にだ。こう提案したのである。
「どうされますか、それは」
「そうだね。少し落ち着いてからね」
「それからですか」
「うん、女は今は少し遠慮したいからね」
苦笑いと共の言葉だった。
「だからね」
「いえいえ」
しかしだった。ここでだ。ジャアファルは主に対して言った。
「ここはです」
「ここは?」
「早くお相手を見つけるべきです」
「大変な目に遭ったのに?」
「大変な目に遭ったからです」
だからだ。余計にというのである。
「だからこそなのです」
「言っている意味がわからないんだけれど」
「女のそうした面を知り」
ジャアファルはいぶかしむケムルに対して話す。
「そのうえで新しい妻を迎えればです」
「いいんだね」
「だからこそです。宜しいでしょうか」
「ううん、そう言うのなら」
「はい、それでは」
「そうさせてもらおうかな」
いぶかしむ顔で話す彼だった。こうしてだった。
彼はあらためて妻を迎えたのだった。その妻とはだ。彼は幸せに過ごすことができた。女のそうした面を知ったからこそである。
どちらか 完
2011・3・25
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