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ドリトル先生と伊予のカワウソ
第八幕その三
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「その頃で最も有名な絵師の人が描いてくれたそうです」
「そうなんだね」
「はい、それでは」
 こうお話してでした、そして。 
 先生達はお屋敷に上がってそうしてなのでした、廊下を進んでいきました。小坊主さんに案内してもらって。
 お屋敷の一番奥のお部屋の前に来ました、そのお部屋の襖は。
 多くの狸達が描かれています、先生はその狸達も見て言いました。
「この愛媛の狸さん達ですね」
「はい、そうなんです」
 小坊主さんがまた答えてくれました。
「僕達皆をそれぞれ描いてくれたんです」
「そうなんだね」
「僕もいますから、それでは」
「今から」
「長老さん、いいですか?」
 小坊主さんは襖の向こう側に尋ねました。
「先生と皆さんをお連れしました」
「うむ、よいぞ」
 襖の向こうから長老さんのあの声が聞こえてきました。
「何時でもな」
「わかりました、それじゃあ」
 小坊主さんは長老さんの言葉に応えてでした、そのうえで。
 その麩を開けて先生達を案内しました、そのお部屋は。
 茶室でした、緑の畳に木の色の壁にです、掛け軸や壺が置かれていて真ん中には茶を淹れる場所もあります。
 そしてそのお茶を淹れる場所のすぐ傍にです、長老さんが座布団の上に座っていました。そのうえで先生に言ってきました。
「ようこそ」
「はい、お邪魔します」
「ささ、では座られよ」
 長老さんは先生達に笑顔で言ってきました。
「そしてお茶を飲みながら話そうぞ」
「それでは」
「さて、ではじゃ」
 長老さんは先生達がお部屋に入って座ってからです、案内してくれた小坊主さんにお顔を向けて言いました。
「ご苦労じゃった、控えの部屋に饅頭があるぞ」
「はい、じゃあ」
「うむ、それを食するがいい」
「御言葉に甘えまして」
 小坊主さんは笑顔で応えてでした、そのうえで。
 お部屋から笑顔で去りました、長老さんは全てを見届けてから先生に笑顔で言いました。
「それでお話があるとのことじゃが」
「はい、昨日カワウソさんのところに行ってきました」
「何もなかったか」
 長老さんは先生達を気遣うお顔で安否を尋ねました。
「あの人達から何もされなかったか」
「はい、全く」
「ならよいが」
「いい方々でした」
 先生は長老さんにありのまま答えました。
「とても」
「ううむ、左様か」
「はい、それでなのですが」
 先生は長老さんが淹れたお茶を飲みつつ言いました。
「私がカワウソさん達に提案したことですが」
「何ですかな、その提案は」
「カワウソさん達と狸さん達がそれぞれお話をしてはどうかと」
「我等がか」
「はい、そしてお互いを知ればと」
「ふむ、それが先生のお考えか」
「そうです」
 その通りだというのです。

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