第一話 暗黒の書の1ページ
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「哲学的無神論書」
を読んで、神様なんていないという現実を知らしめされた
リンジーは、これから何を頼りに生きていけばいいのか本当にわからなくなって、それからまる2日部屋から1歩も出なかった。
彼女は2日間、ずっとあの本のことばの意味について考えていた。"神はいないからだ"
彼女が導きだした答えは、"世界は空っぽだ"ということだった。そして、今までない倦怠感と孤独感に襲われ、リンジーは夢見がちな少女から冷徹な女王に変貌していった。
それはもう、絶望といってもいいような逃げ場のない空白の2日間で、母親にむりやり連れ出されるまで、ほとんど呼吸しかしなかった。
母親は、閉じ籠った理由について父親が死んだからだと考え、皮肉にもリンジーを教会に連れて行った。
リンジーはもちろん拒否したが、ドアを叩く母親の甲高い声に負けてやむなく部屋を出た。
教会でのことだった。
その日は月曜日だったので、二人以外に礼拝者はおらず、いつもいる白い髭の牧師ではなく20代くらいの若い牧師がいた。
その牧師も、キリストの像も、きらきら輝くステンドガラスも、リンジーにとっては意味を持たないまがい物でしかなかった。
だが、なにも言わず着席して下を向いて時間が過ぎるのを待った。
すると、母親がシスターに挨拶しに行くと言って、リンジーを残して中庭に行ってしまった。
そのせいで礼拝堂にはリンジーと若い牧師の二人だけになった。
そうなるとさっきまで母親と話していた牧師も、ずっと黙り込んでいる難しそうな少女に話し掛けざるおえなくなった。
牧師は数秒ほど静かにリンジーをみつめ、
「こんにちは、リンジー。君のお母様から名前を聞いたよ。はじめまして、僕はポール。ポール・ハリス。月曜日だけ教会にいるんだ」
と、牧師らしい優しい口調で話し掛けた。
リンジーは顔も上げずそれを無視した。
すると牧師はいきなりリンジーの横でひざまづき、かおを見上げて
「悲しいことでもあったのかな、でも大丈夫。神様はいつも僕たちを見守ってくださるからね。さあ、祈ろう」
と、リンジーをなだめた。
牧師の片手が、リンジーの肩に置かれた。
「お父様が、お亡くなりになったんだね。」
牧師は遠くを見据えて、感慨深そうに言った。
リンジーは、肩に置かれた牧師のなまめかしい手を睨んだ。
牧師はかまわず続けた。
「とても信仰心が熱い方だったと、ブーゲ牧師から聞いていたよ。」
リンジーは、父親をバカにされたような気がした。この牧師から出てくる言葉は、なぜか全部がうわ言にしか聞こえない。それに、いもしない神様を真面目に信じていたバカな父親だと、改めて思い知らされようだ
それから、いつもここに来ると必ずいたブーゲ牧師のことを思いだした。
サ
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