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花唄  〜春のはじまりで〜
第二章

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第二章

「落ち込んでばかりでもね」
「仕方ないからな」
「そうだよね。わかってるんだよ」
 肩を落として。僕は答えた。
「わかってるけれど」
「少しずつ立ち上がるか?」
 その僕への言葉だった。
「そうするか?」
「少しずつ?」
「ああ、今は辛くてもな」
 僕を気遣ってだ。そうしての言葉だった。
 その気持ちがわかってだ。僕は滲みた。そのうえでだ。
 僕はその心にだ。静かに頷いた。
 その僕の頷くのを見て。彼はまた言ってくれた。
「有り難う」
「御礼はいいさ。それよりも」
「それよりも?」
「花、見ないか」
 僕にだ。今度はこう言ってきた。
「花。どうだ?」
「そうだね。折角花見に来たし」
「桜な。見たら」
 その花をだ。見ればだった。
 どの桜も満開だ。花びら達が散ってもいる。
 その散った花びらが舞ってだ。花霞にさえなっている。
 その花霞が僕達のところに来た。それでだった。
 僕の肩の上に落ちた。一つずつひらひらと。
 まだがっくりと肩を落としているけれどその肩の上にだ。
 少しずつ落ちて僕の肩を覆ってくれる。その花達を見てだ。
 まだ笑えないけれどそれでも。和むものは感じた。
 そんな僕を見てだ。親友がまた言ってくれた。
「もう少しここにいるか?」
「そうだね。まだね」
「春になったよな」
 僕にこんなことも言った。
「冬からな」
「冬は。終わったんだよな」
「終わったさ。冬は絶対に終わるんだ」
 その冬の中にまだいる僕への言葉だ。それがよくわかる。
「その後には春が来るんだ」
「こうしてだね」
「そう、終わらない冬はなくて」
「来ない春はない」
「そうだよ。だからな」
 微笑んでいた。その微笑みでの言葉だった。
「今はこの花を見ような」
「そうだね。そうしよう」
 僕の肩はまだがっくりと落ちていた。笑うこともできない。
 けれど春は感じた。春は今確かにある。その春を見て。
 僕田前に足を出した。花びら達がその僕の周りに漂ってくれている。春は確かにある。僕はその中に入った。また笑う為に。


花唄  〜春のはじまりに〜   完


                  2011・4・3

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