第001話 ─Castaway─ 遭難
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「くおおおっ!」
一夏は[白式・雪羅]に残されたエネルギーを振り絞り、特異点を持ち上げた。稲妻が直撃し、低下した絶対防御をすり抜けた電撃は、一夏の意識を刈り取りそうになる。
「があああっ!」
『坊や、何してるんだい! あんたも、さっさと逃げな!』
圧縮が止まり、時間の流れが正常に戻ったが、空間は軋み、いまにも破断しそうになっていた。
「だめだ、このままじゃ被害がでかすぎる! きっと、空まで持って行けば!」
『馬鹿言ってんじゃないよ、坊やがもたないよ!』
「やってみなきゃ、分からない。俺は、皆を守る!」
一夏は特異点を持ち上げたまま、スラスターを噴射する。
(まだ、まだまだ、もっとだ。白式、俺たちの力は、こんなものじゃないだろう)
一夏の願いを受けて、[白式・雪羅]の背面に巨大なブースターが出現する。
(ありがとう、白式。行こうぜ)
限界以上の力を注ぎ込み、ブースターが火を吹く。噴射煙を引き、[白式・雪羅]は急速に高度を上げた。強いGがかかり、一夏は衝撃に耐えた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼
噴射煙の太い柱が空へと伸びてゆくのを、多くの人々が見た。
幼子を抱いて避難する者、頭部に包帯を巻き担架で運ばれる者、脱出船のタラップを登る者……そして──
「一夏……」
「一夏さん」
「一夏」
「一夏っ!」
「一夏ぁ」
「嫁!」
「……一夏」
「イチカ……」
姉と仲間たちが見守るなか、噴射煙の柱は雲間へと消えていった。
数瞬後、雲の向こうで光が膨れた。
雲を突き破り巨大な光球が出現し、衝撃波が雲を吹き飛ばす。
幸いなことに、その力は地上までは届かず、人々はあまりの眩しさに目を覆った。
光球は次の瞬間、急速に収縮した。千切れた雲を巻き込んで光の点になり、やがて何事もなかったかのように消えた。
後には、雲ひとつない青空が残った。
△ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽
「右舷方向から高速で本艇に接近するISあり。IFF発信なし。動力なしで、自由落下中」
「対空戦用意。追尾を続けろ」
「予測着水地点、本艇の右舷、約50m」
「救難ボート用意。警戒は怠るな」
意識の混濁したアイリーン・ブリジット・ダナハーは、ぼんやりと救護員を認めると大人しく投降し、武装解除の上で[タケミカヅチ]に収容された。
千冬の尋問に、彼女は火山上空であったことをすべて話した。
織斑一夏は、MIA(作戦行動中行方
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