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無欠の刃
下忍編
似た者同士
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に逃げようとしたカトナだが、その術の範囲は相当広く、足が捕獲されてしまう。

 「くっ!!」

 すぐさま、体がチャクラで生み出された水流にのまれ、海の中に沈められそうになる。
 カトナの喉から、悲鳴が、もれる。

 「やっ、くっ」

 手のひらにチャクラを纏わせ、水面に触れて沈まないようにするが、引っ張られるのが生半可な力ではなく、カトナの体が徐々に沈み始める。

 「さっ、す」

 咄嗟に、こちらに駆け寄ってくるサスケの名前を呼び、起き上がろうとしたカトナは、次の瞬間、ずんっと、自分の体が重くなったのを感じた。
 同時に気がつく。

 大太刀から1m以上、離れてしまっていたという、事実に。

 やば、い。かも。

 カトナの口が、水の中に沈む。こぽりと、口から泡が漏れていき、更にどんどん体が沈んでいく。水流が、深く深く、沈めていく。抵抗するためのチャクラが足りず、変化が解けそうになるのを、気力で繋ぐ。
 あかい髪が、花弁のように広がる。伸ばした手が、空に届かず、水面の向こうに見えた、サスケの焦った顔がぼやける。

 だれか、たすっー!!

 カトナのその声は、泡となって消えかけた瞬間、



 『ねぇちゃん!!』



 あのとき以来、呼ばせない少年の声が、耳を、つんざいた。

 ナルトを、泣かせて、たまっ、るか!!

 それは死よりも重い罪だ、それはカトナが自分自身に課した義務であり、罰であり、あの人たちの大切な願いだ。頼みだ。
 こなさなければ、こなさなければー!!

 力が、いる…今ここで立ち上がれる力、が。

 そう思った瞬間、視界が、真っ赤に染まる。
 カトナの体から、赤いチャクラが漏れ出す。
 背中にやきつくような痛みが走る。髪が、よりあかあかしく、荒々しく、焔のように燃え上がる。
 異変を黙視したサスケは目を見開き、驚く。彼は知っている、カトナに九尾は封じられておらず、封じられているのはナルトなのだと知っている。
 なのに、これはどういうことだ? サスケの頭は、その答えが分からない。しかし、この状況で分かることはひとつだけある。

「カトナ!!」

 その名前をよんで、カトナの体へと手を伸ばす。九尾のチャクラに押されるように、水流から解放され、浮かび出したカトナの体に触れたサスケの腕が焼かれる。

「かとっ、な」
「……?」

 上を見上げたカトナは、痛みで顔をしかめながらも、必死に自分の手を掴もうとするサスケに、既視感を覚える。

 『カトナ』

 その切羽詰まったような表情が、あの人に似ていて、なんだかとても悲しくなって、カトナの思考が止まる。
 次の瞬間、カトナから力がぬけ、九尾のチャクラが沈んでいく、静まっていく。
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