第一章
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第一章
花唄 〜春のはじまりで〜
春になった。
けれど今の僕は。それを喜べなかった。
急だった。本当に急だった。
彼女が死んだ。交通事故だった。
何でこんな急に、ずっと一緒にいたかったのに。
けれど彼女は死んだ。知らせを聞いた僕は見たのは病室で安らかに、眠った様な顔でそこに横たわっている彼女だった。勿論一言も話さない。
それを見て呆然となって動けなくなって。言葉もなくなった。
お通夜もお葬式も夢の様だった。本当に信じられなかった。
お葬式が終わって暫く経ってだ。まだ気落ちしたままの僕にだ。親友の一人が携帯で声をかけてくれた。
「何処かに行かないか?」
「何処か?」
「ああ、何処かにな」
とりあえずだ。外に出ようかというのだ。春休みで学校は休みだった。大学の春休みは長い。そのことが今は本当に有り難かった。
その春休みにだ。彼は僕に声をかけてくれた。
「行かないか?どうだ?」
「そうだね」
僕は力なくだけれど応えた。携帯の向こうの彼に。
「それじゃあね」
「それで何処に行く?」
「何処がいいかな」
僕の方から尋ねた。
「本当に。何処がいいかな」
「春だからな」
彼が今度言うのはこのことだった。
「花見なんてどうかな」
「花見?」
「ああ、花見な」
それはどうかとだ。僕に言ってきた。
「どうだ?桜でも見るか?」
「もう。咲いてるんだ」
彼女が死んでお葬式から暫く外に出ていなかった。とても出る気分になれなかった。それで桜が咲いていることもだ。全然気付かなかった。
それでつい言ってしまった。その僕にだ。
親友は。こう言ってくれた。
「満開だよ。じゃあ桜見るか」
「うん」
力なく、笑えなかったけれどそれでも。僕は頷いた。
それで外に、久し振りに出ることになった。親友と待ち合わせて。
そうして桜が咲いている場所に向かった。そこにはもう人が一杯いた。
その人達を見てだ。親友が僕に言ってきた。
「凄いな」
「多いね」
「ここ、桜が凄く多いからな」
「それに奇麗だね」
桜を見てだ。僕は言った。
「とてもね」
「来てよかったか?」
「多分ね」
断言できなかった。そのうえでの言葉だった。
「こういうのが奇麗っていうんだろうね」
「ああ、そうだろうな」
「有り難う」
僕は彼にお礼を言った。
「ここに連れて来てくれて」
「お礼はいいさ。ところでな」
「ところで?」
「やっぱりまだなんだな」
話がそこに移った。自然に。
「まだ。気は晴れてないんだな」
「うん、どうしてもね」
沈んだ顔で。僕は答えた。
「本当に急だったからね」
「そうだよな。けれどな」
「わかって
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