竜殺し
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物質が激突することによる衝撃は速度の二乗に比例し、さらに激突する物質の質量に比例する。
今回の場合、速度は大したことない。最初の距離が短く助走に使える距離が少なかったためだ。しかし、竜の身体は見ての通り巨体。質量だってそれ相応に巨大だ。
そんなものが逃げ場のない空中で襲って来たら一巻の終わりだろう。
もっとも……ふいに、と注釈がつくのだが。
俺は利き腕とは逆の腕である右手を盾にする。
凄まじい衝撃が腕に伝わるのと同時に骨の折れるような嫌な音と何か金属がひしゃげるような甲高い音が響き渡った。
「リン!?」
後ろから聞こえるユウキの悲鳴のような声。
歯を食いしばって腕から伝わる痛みに耐えつつ、さらにこちらに追撃をかけようとしている竜に向かって、飛ばされながら腕を振る。
袖口に仕込んでおいた……先程簡易の盾として使ったナイフを遠心力を使って飛ばした。
そのナイフは竜の瞳に直撃。刺さるまでもいかなかったが、怯ませることに成功した。
圧倒的な質量を感じさせる、竜の絶叫に顔をしかめながら、できたその隙に空中で体勢を立て直し、地面に両足から着地。地面を滑ることで運動エネルギーを相殺する。
そして地面に刺さっていた剣を折れていないほうの手である右手で掴むと同時に反転。
未だ、視界の回復していない竜の喉元目掛けて体重を全て載せた、愚直なまでに一直線の突きを放った。
その突きは、ひび割れていた鱗のちょうどひびの部分を正確に捉え……叩き割った。
「っ……浅いか」
勢いが死ぬと、即座に竜の頭を蹴って離脱する。
絶叫と共に鮮血が噴き出すが、手応えは軽く、頸動脈までは届かなかったように思える……が、鱗は叩き割った。
「リン! 無茶し過ぎ!」
「さすがに制限されてノーダメージで倒せる程、俺は強くない。肉を斬らせて骨を断つ……そんな気持ちでなきゃやつの防御は抜けない」
「言い訳しないで! 後でしののんにも報告するからね!」
「……」
詩乃に報告されると少々面倒かもしれない。ただでさえ、俺がここに居るという原因を作ったことで精神的にダメージを負っているかもしれないのに……。
「とりあえず竜を倒してから考えるか」
飛んできた球状の火の玉ブレスを横に転がりながら回避しつつ、口早に治癒の神聖術を唱える。
さすがに高位のものは無理だが、ある程度痛覚を鈍らせるものならば可能だ。
もちろん、痛覚を意識の外にやる技術も持っているが……使わない方がいいに決まっている。
「次で仕留めるぞ、ユウキ」
「……うん、わかってる」
剣を逆手に構え、体勢を低く落として地面を蹴る。
そしてこちらに向かって来る竜目掛けて全力で投擲した。
身
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