戻ってきた日常
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「それでは今日はここまで。課題ファイル25と26を転送するので来週までにはアップロードしておくこと」
午前の終わりを告げるチャイムが鳴り、俺は手持ちの端末で軽く確認をすると固まった首をポキポキと鳴らし、軽く伸びをする。アインクラッドの始まりの街の鐘の音によく似た音を聞き流しながら端末を鞄にしまうと、同級生の女子生徒が声をかけてきた。
「ねぇ、雪羅くん」
「ん?」
「君にお迎えが来てるよ」
指差す先には黒髪を背中まで伸ばし、碧色の瞳をした女子生徒がいた。肩に鞄をかけ、こちらに手招きしている。
「ああ、サンキュ」
「ねぇ、雪羅くん。あれってもしかして雪宮 雫さん?」
「そうだが、それがどうした?」
「あの子、学校で密かに人気らしいんだよね」
「ふーん」
「彼女とはどういう関係?」
その女子生徒は何か期待してそうな顔をしていた。俺はため息をつくと、
「それは直接彼女に聞けよ・・・」
「え〜、いいじゃ〜ん!!」
「これ以上用がないなら俺もういくぞ」
俺は車椅子を動かして雫のところまで行った。
「すまん、待たせたな」
「ううん、大丈夫。それより、さっき何聞かれてたの?」
「ねぇねぇ雫さん!」
「えっ、な、何ッ?」
先程の女子生徒が雫に尋ねてきた。
「雪羅くんとはどういう関係なの?」
「へっ!?え、えーっと・・・」
すまん雫、俺にはお前を救えない。
俺は心の中で合掌し、雫の答えを待つ。そして雫は頬を紅くしながら答えた。
「た、大切な人、かな?」
「大切な人、ねぇ・・・」
女子生徒はニヤニヤしながらこちらを見る。
この年頃の女子はやはりどの時代でもこういうジャンルに興味があるらしい。
「じゃあ、その話はのちほど詳しく聞かせてもらおうかな♪」
「程々にしろよ?」
「分かってるって〜♪」
その女子生徒が教室に戻っていくと、雫は頬を紅くしたまま言った。
「あの、シオン・・・」
「“雪羅”だ」
「あぅ、ご、ごめん・・・」
「ハァ、はやく行こーぜ。皆待ってる」
「う、うん・・・」
とんだ邪魔が入ったが、俺と雫はカフェテリアに向かう。俺は基本的に学校では車椅子を動かして行動している。
アクアを使ってもいいのだが、まだ試作段階のため公にはあまりできない。親父の話ではまだ少し時間がいるらしい。
車椅子をこいでいくと、カフェテリアに到着した。
「おーい里香、珪子、って何やってんだ?」
「見ての通り覗きよ」
リズベットもとい、篠崎里香は悪びれもなくそう答えた。
茶髪でいまいち分かりづらいが、特徴的なそばかすですぐに彼女だと分かる。
その向かいで
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