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レインボークラウン
第百五十六話

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                 第百五十六話  兄の言葉
 春奈の兄は春奈にだ、ある日何気なくこんなことを言った。
「やっぱりお口ってね」
「お口って?」
「綺麗な方がいいよね」
 こう言ったのである。
「臭いもしない方がね」
「いいのね」
「お口の臭いが臭いとね」
 それだけで、というのだ。
「何か嫌になるから」
「じゃあ女の子も」
「男の子もだけれどね」
「やっぱりお口は臭わない方がいいのね」
「僕はそう思うよ」
 こう言ったのである。
「やっぱりね」
「そうなのね」
「うん、まあ僕自身もね」
 彼もだというのだ。
「お口の臭いは気をつけてるよ」
「それに歯を磨かないと、よね」
「そう、虫歯になるからね」
 次にこれだった。
「注意しないとね」
「やっぱり口臭?」
「僕はそれが一番気になるんだ」
 思春期の男の子らしい言葉だった、見れば結構身奇麗にしている。それで口臭も気になっているのである。
「今もね」
「お兄ちゃんそんなに」
 春奈は妹として兄に言った。
「お口の臭いしないわよ」
「いつも磨いているからだろうね」
「やっぱり磨かないと」
「臭う様になるよ」
 このことは避けられないというのだ。
「どうしてもね」
「そうなのね」
「誰でも同じだよ」
 歯を磨かなければ、というのだ。
「臭うから」
「そうなの」
「春奈も気をつけてるよね」
「うん、お兄ちゃんに言われてね」
 強い声で兄に答えた春奈だった。
「いつもそうしてるわ」
「気をつけるんだよ、女の子は特にね」
「ええ、わかってるわ」
 返答はこれしか有り得なかった、そうして実際に。
 春奈は毎日歯を磨いて口臭をさせなかった、その香りは兄からも笑顔でこう言われた。
「ミントみたいだよ」
「有り難う」
 春奈にとって一番嬉しい言葉だった、それで今日も歯磨きをしっかりとするのだ。


第百五十六話   完


                            2014・8・1
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